宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展

主催:「借りぐらしのアリエッティ」制作委員会
近日公開

会 場 : 西武池袋本店7階(南)=催事場(東京都)

会 期 : 2010年8月4日(水)〜8月8日(日)


※会期中、会場内のスタジオジブリ ショップで税込1,050円以上、
お買いあげのお客さま、または岩波書店の書籍をお買いあげの
お客さまへ毎日、先着500名さまに特製「ミニ本」を1冊プレゼントいたします。

大切な本が、一冊あればいい。-宮崎駿
今後のスケジュール
  • 会 場 : 阪急百貨店 神戸阪急 3階 催場(兵庫県)

    会 期 : 2010年8月11日(水)〜8月17日(火)

  • 会 場 : ルスツリゾート(北海道)

    会 期 : 2010年9月4日(土)〜9月19日(日)

  • 会 場 : 松坂屋名古屋店(愛知県)

    会 期 : 2010年9月22日(水)〜10月11日(月・祝)

  • 会 場 : タカプラ(鹿児島県)

    会 期 : 2010年10月16日(土)〜11月7日(日)

大人には懐かしく、子供には新鮮な永遠の名作たち。

この展示会では、「岩波少年文庫創刊60周年」を記念して、アニメーション映画監督の宮崎駿氏が選んだ少年文学50作品への
推薦文をご紹介します。1950年に創刊された岩波少年文庫は、勇気と励ましと異文化への憧れとともに、日本の少年少女たちに
良質な児童文学作品を届け続けて来ました。
宮崎氏も岩波少年文庫で育った一人なのです。ぜひ、大人の方には懐かしく、これから読む子供たちには新鮮な名作を
探してみてください。スタジオジブリ最新作のご紹介コーナーも開設します。

展示内容

宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文を展示

会場では、冒険、ファンタジー、民話、歴史、伝記など、ジャンルに分けてご紹介します。

「床下の小人たち」
「床下の小人たち」
「チポリーノの冒険」
「チポリーノの冒険」
「ネギをうえた人」
「ネギをうえた人」
「ファーブルの昆虫記」
「ファーブルの昆虫記」
「第九軍団のワシ」
「第九軍団のワシ」
「星の王子さま」
「星の王子さま」
「注文の多い料理店」
「注文の多い料理店」
宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文を展示

スタジオジブリ作品の源流のひとつでもある少年文学。
創刊時から400冊をこえる岩波少年文庫を実際に手に取りながら、
3ヵ月かけて選んで頂いた50冊を、ご本人の言葉・文字でご紹介します。

50冊の中からあなたの人生を豊かにする一冊が必ず
見つかるはずです。

中川李枝子さんから、本展にメッセージも。「“宝の山”から選んだ50冊」

 宮崎駿さんの選んだ50冊はどれも私がわくわくしながら読んだ傑作ぞろいです。「岩波少年文庫 創刊60周年記念」の今、膨大な宝の山からわずか50冊しか選べないとは、宮崎さんはさぞ悩まれたこととお察しします。私にも選びたい本は
切りなくありますもの。この気持ち、岩波少年文庫ファンの老若男女だれでもおわかりでしょう。私たちが少年文庫のおかげで、どれほどたくさん、古今東西の名作を読んだか、図書館一つ分の質と量はあると思います。

 私が最も盛んに読んだ十代のころは、目も頭も疲れ知らずで旺盛な読書エネルギーがあふれていました。消化吸収力もめざましく、読書が血となり肉となり自分が強く逞しく鍛えられるような爽快感に満足したものです。

 だからといって立派な人になろうなんて考えはみじんもなく、ただもう面白いので夢中で読みました。『ハイジ』を読んだら次は『海底二万里』次は『イワンのばか』といった具合です。

 宮崎少年だって面白くて面白くて目を輝かせて読んだにちがいありません。『床下の小人たち』の様子も手に取るようにわかったのではないかしら。

 宮崎さんならではの50冊と共に添えられたコメントは意味深長で、優れたお仕事の秘密のカギは岩波少年文庫にありと私は睨みました。ジブリ作品の底力となった50冊であるのは確かと思います。

 さて、強引といわれるのを承知で私の推す『あらしの前』『あらしのあと』(1951年・1952年/ドラ・ド・ヨング作) 『パセリ通りの古い家』(1955年/ベナリイ・イスベルト作)を置かせてください。第二次大戦中の国策「見ザル 言ワザル  聞カザル」が解かれたとき、外国の自分と同じ世代はどうだったかを猛烈に知りたくて読んだ3冊です。勝った国の子どもも負けた国の子どもも決して幸せではありませんでした。普通の人々の生活を通してこそ伝わる戦争の酷さと平和の大切さを私は一生忘れないでしょう。アウシュビッツで殺され煙となって消えたカレル・ポラーチェク、収容所で美しい物語を40篇書き残した『くろんぼのペーター』(1955年)のヴィーヘルトも忘れたくありません。

 少年文庫が発刊60年ともなれば読者層は厚く、私のような後期高齢者から文字を覚えたての小学生までさまざまです。50冊のリストに私は感無量、歴史を感じました。今、十代の人たちの感想も聞きたくなります。

 私が六年生のとき一年生だった宮崎さんは、少年文庫に囲まれて明るくのびのびと子どもの時代を楽しんだでしょう。
 私はといえば義務教育の半分は戦争中の国民学校で残り半分は戦後の小学校と新制中学校、つまり軍国主義と民主主義の二通りを体験しました。

 「ほしがりません勝つまでは」の時代、小国民の私にはほしいものが一つだけありました。本です。本があれば親と離れた疎開も転校も苦にならず、その為にも本は命綱ですから、いつも必死で本を探していました。読んで楽しむのが唯一の元気の素でした。

 それなのに国民学校は外国の物語を読むのはスパイと決め付けて翻訳本を禁じ、私のアンデルセン童話集は没収されました。それ以来私は用心深くなって、今でも本は一人で隠れて読むのが好きです。

 戦後の混沌が治まって入学した中学の図書室で岩波少年文庫の『ふたりのロッテ』(1950年/エーリヒ・ケストナー作)を見つけたときの衝撃は「民主主義は、六・三・三制、男女共学から始まった」の思いと重なって私の頭脳に深くインプットされました。

 ケストナーは実に新鮮で誠実で明快でした。石井桃子さんが唱えた、子どもの文学の世界的基準「おもしろく はっきり わかりよく」は私を引き付けました。しかもケストナーは読者と対等に向かい合う作家です。ロッテについても女の子だからと特別扱いはしません。双子でも個性は違い、考えて行動する自立した賢い少女たちは大人顔負けの活躍をします。それまで女の子は女学校、男子は中学校と分かれていたのが女子も中学生になった教育基本法に岩波少年文庫はまさしくぴったりでした。

 少年文庫の生みの親である石井桃子さんのお話では、最初の5冊が出版されるや、日本じゅうの新制中学校が買ってくれたので岩波書店は赤字を出さないですみ、その後の出版を続けることができたそうです。とすると、全国の中学生たちが少年文庫の出版に係わったといえるでしょう。
 「よい本を作ればよく売れるのはよい時代」というのが石井桃子さんの口癖でした。

 岩波少年文庫がこれからもずっと読みつがれますように。宮崎さんの50冊を見逃しては一生の大損です。

 そしてあなたの好きな50冊もリストにして並べてみてはいかがですか。

中川李枝子

≪プロフィール≫

児童文学作家。東京都立高等保母学院(現・都立高等保育学院)卒業後、保育士として働くかたわら、
児童文学グループ《いたどり》の同人として創作活動を始める。
童話「いやいやえん」で厚生大臣賞・他多数受賞。代表作に「ぐりとぐら」「そらいろのたね」他。
映画「となりのトトロ」オープニング主題歌「さんぽ」の作詩を手掛けるなど宮崎駿氏との親交も深い。

岩波少年文庫60年のあゆみを紹介

戦後から現代までの岩波少年文庫60年の軌跡をパネルなどにてご紹介します。

岩波少年文庫60年のあゆみを紹介

スタジオジブリ最新作『借りぐらしのアリエッティ』コーナー

借りぐらしのアリエッティ

2010年7月17日公開、スタジオジブリ最新作「借りぐらしの
アリエッティ」は、宮崎駿氏が約40年前に読んだ『床下の小人たち』を
スタジオジブリの新鋭・米林宏昌監督が瑞々しい作品に仕上げました。

アリエッティの住む家をジオラマで再現。制作資料の展示もあります。

  • ● アリエッティの家ジオラマ
  • ● 映画制作資料
  • ● 予告編上映
2010 GNDHDDTW

スタジオジブリショップ

スタジオジブリ関連商品が一堂に会したイベントならではのグッズショップ。
『借りぐらしのアリエッティ』グッズも販売します。