2010年7月2日 10時56分
さいたま地裁で先月行われた強盗致傷事件の裁判員裁判で、弁護側の「求刑」通りの実刑判決が出された。裁判員を務める市民が判断しやすいよう、最近は検察側だけでなく、弁護側が弁論で具体的な量刑を提示する例が増えているが、弁護側の実刑求刑と同じ判決が出るのは珍しいケースだ。
埼玉県北本市の土木作業員の男(23)は昨年9月、同県川越市内などでコンビニ・路上強盗を繰り返したとして起訴された。公判では検察側が懲役9年、弁護側が同7年を求刑。6月7日の判決公判で大谷吉史裁判長は「検察側は、更生の見込みがないなどとして懲役9年を求刑しているが、将来的な不確定条件に基づくもので、採用できない」などとして、弁護側主張通り懲役7年とした。検察側、弁護側ともに控訴せず、判決は確定した。
かつては、被告の権利を守る立場の弁護人が実刑を求めることに否定的な意見もあったが、裁判員制度施行後は実刑求刑も増え始めている。事件を担当した村木一郎弁護士は「裁判員が妥当だと認めてくれるような求刑をすることが弁護側の主張への信頼感につながり、被告の利益になる。被告自身も今回の判決内容に納得している」と話している。
過去の裁判員裁判では、弁護人の求刑と同一の執行猶予付き判決が出たり、「懲役5年以下」などと幅を持たせた弁護側の「求刑」範囲内の実刑判決が出たケースがある。【伊藤一郎、平川昌範】