基地の県内移設の是非をめぐる沖縄の民意を問う選挙をにらみ、日米両政府が争点からぼかそうともくろむことが過去にもあった。その悪弊がまた繰り返されようとしている。
最大懸案であり続ける普天間飛行場の返還・移設問題で、日米両政府の実務者が、名護市辺野古への移設を明記した日米合意に基づく現行計画のV字型と、滑走路を1本にするI字型を報告書に併記する。
5月末の日米共同声明は、代替施設の位置、工法の検討を8月末までに完了させると明記していたが、最終決着は11月の県知事選後に先送りされる。
5月末の県民世論調査は、辺野古移設反対が84%に上った。県内移設ノーの世論の高まりを直視し、頭越しの合意を押し付けられないという判断なら当然のことだ。
しかし、県内移設の是非が問われる県知事選挙、9月12日の名護市議会議員選挙を控え、菅政権は8月中の日米の最終案決定が地元の反発を強め、両選挙で県内移設が正面から問われることを避けたがっている。本末転倒な話だ。
菅政権中枢や民主党内には、県内移設を「不可能に近い」としながら、自らの言葉で「反対」を表明しない仲井真弘多知事の再選によって、対沖縄交渉の進展に望みをつなぐ向きもある。9月の名護市議選では移設容認派の市政野党側が多数を占め、移設絶対反対を掲げる稲嶺市政を揺さぶることを期待しているのだろう。
争点をかすませて、県内移設を容認する空気があると解釈できる余地を残すことをもくろむ国の横暴な考えであり、沖縄の地方自治への露骨な干渉に等しい。
新たなI字案は2本滑走路のV字案より飛行経路が集落から遠くなり、埋め立て面積が縮小できると主張している。だが、辺野古崎の豊かな海をつぶして新基地を造ることに変わりはない。
そもそも、日米共同声明はいかなることがあっても8月末までに工法や位置などを決めるとしていたが、その解釈も二転三転している。日米合意自体の重さもぐらついている。
視点を変えれば、強固な沖縄の反対世論が日米両政府を追い込みつつあることを示す。手前勝手な国家の思惑に振り回されることなく、県内移設が無理であることをしっかり見定め、腰を据えて秋の政治決戦を迎えたい。
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