2010年6月9日 21時56分 更新:6月10日 1時22分
8日発足した菅内閣の支持率は、毎日新聞が8、9日に緊急実施した全国世論調査で66%に達した。鳩山内閣退陣前の20%から一気に3倍増の急回復。民主党内では「このまま国会会期を延長せず、早期に参院選に突入すべきだ」との声が高まり、党執行部も「延長なし」に傾いた。今国会での郵政改革法案成立を求める国民新党は強く反発し、「連立離脱」も辞さない構え。高支持率が連立与党を揺さぶる皮肉な構図となっており、菅直人首相は就任早々、浮かれてはいられない難しい判断を迫られている。【高山祐】
民主党の枝野幸男幹事長は9日、世論調査について「(発足直後の内閣支持率は)評価ではなく期待なので、期待に応えていかないとならない。高ければ高いほど、責任は重いと思っている」と語った。実績を重ねて菅内閣への評価につなげる決意表明だが、党内に強まっているのは、実績を上げる前でも期待値の高いうちに参院選に突入してほしいという参院選候補者らの声だ。
仙谷由人官房長官は9日の記者会見で「選挙を控え、大延ばしに延ばす事態ではない。(郵政改革法案を)今国会中に上げられるかどうか冷静に分析しないと、ドン・キホーテのような(無謀な)ことを言っても仕方がない」と語り、社民党が連立を離脱した現状の参院では会期を延長しても同法案の成立は困難との認識を示した。
同日発覚した荒井聡国家戦略担当相の事務所費問題も早期閉会論に拍車をかける。ベテラン参院議員は「重大な問題ではない。しかし、野党側にほじくられるなら早く国会を閉じた方がいいという力学が働く」とみる。
世論調査で菅内閣を支持する理由は「政治のあり方が変わりそうだから」が58%で最も多く、次いで「指導力に期待できるから」の21%だった。鳩山内閣末期の指導力への期待は5%未満。世論は鳩山由紀夫前首相と小沢氏による「二重権力構造」を嫌い、米軍普天間飛行場移設問題で迷走を繰り返した鳩山前首相の指導力を見限っていた。小沢氏に近い中堅衆院議員は「現政権が評価されているのは内容よりも決断力だ。国民新党を振り切っても前に進むというイメージになれば、支持率はかえって上がるかもしれない」と「国民新党切り」も辞さない決断を菅首相に求める。
だが、鳩山前首相が社民党の連立離脱をきっかけにつまずいたのも事実。9日、民主党の輿石東参院議員会長や国民新党の自見庄三郎幹事長ら両党参院幹部が国会内で協議した際、国民新党側は「連立離脱のリスクも考えてほしい」とけん制。同党の亀井郁夫参院議員は記者団に「民主党(の姿勢)は厳しい。しかし(同法案が)成立しないなら『さようなら』だ」と語った。
鳩山内閣時代、支持率低落に苦しんだ民主党にとって、参院選へ向け国民新党の握る「郵政票」は魅力的だった。支持率が上がれば無党派層からの得票も期待できるため「国民新党の票はそれほど大きくない」(参院議員)との声も漏れる。
連立のまとめ役だった小沢氏は静観の構え。9日、幹事長職の引き継ぎで枝野氏と会談した後も「一兵卒」を強調してみせた。菅首相は同日夜、記者団に「一兵卒としてでも頑張ろうという意欲を持っていただいていることはありがたい」と語るしかなかった。