2010年6月9日 11時3分 更新:6月9日 11時36分
日本が1932年に中国東北部につくった「満州国」で、国家建設を担う人材の養成機関として設立された「満州建国大学」の最後の全国規模の同窓会が8日、東京都内のホテルで開かれた。54年から各地で毎年開いてきたが、会員の高齢化が進み、活動を休止することになった。今後は卒業生の一部が集まり旧交を温める。
建国大学は38年に満州国の首都・新京(今の長春)に開校し、45年の日本の敗戦まであった。掲げたスローガンは「民族協和」。学生は「新国家建設に尽力したい」と夢見て入学した。学費は免除され小遣いも出た。
一学年のほぼ半数は日本人で、あとは満州、朝鮮、モンゴル、ロシア系の学生だった。各民族が交じった「塾」と呼ばれる寮生活を通じ、互いの考えや文化の違いを学んだ。戦後、約1500人の卒業生のうち一部はシベリアでの重労働を経験。日本の官界や経済界、ジャーナリズム界に進んだ人も多かった。
同窓会長の元会社役員、藤森孝一さん(89)=東京都町田市=によると、近年は卒業生も80歳を過ぎ、同窓会につえをついたり、車椅子に座って出席する人も目立つようになった。卒業生の3分の2が死去したか行方不明という。
最後の同窓会には韓国からも卒業生が出席。藤森さんは卒業生の家族らを含む約120人を前に「多くの塾生が亡くなり非常に残念だが、互いの違いを認める大切さを学んだ当時のことは終生忘れられない」とあいさつした。司会役の元毎日新聞論説副主幹の松本博一さん(88)=埼玉県川越市=は「異なる立場の同級生と触れ合った日々は、その後の人生に役立った。(休止は)複雑な思いだが、今後も仲間と顔を合わせたい」と語った。【工藤哲】