2014年度末の北陸新幹線の開業に伴い、JRから経営分離される並行在来線の運営を担う第三セクターについて、県の経営委員会は15日、今後30年間の赤字額の見通しを300億〜600億円とする経営計画案をまとめた。列車の維持費や国の負担割合など調整の余地が大きいため、見通しの幅が広くなった。今後は第三セクターや県、沿線自治体、国などの調整で経営計画を詰めることになる。
並行在来線は、信越線の直江津―長野県境間と北陸線の直江津―富山県境間の計約100キロ。県や沿線自治体などでつくる第三セクターが北陸新幹線の開業に伴ってJRから経営を引き継ぐ。
経営計画案をまとめたのは「県並行在来線開業準備協議会」の経営委員会(委員長、田中辰雄・慶応大准教授)。赤字額の見通しの幅が大きくなった要因は、貨物列車が走ることで傷む線路などの補修費を国が多く負担するよう、県が国に求めていることなどが背景にある。
第三セクターは、貨物列車を運行しないため、現行制度では国の負担は50%。だが既に並行在来線を運営している青森県が85%の負担を国に求めていることから、同委員会は赤字額を試算する際、この数値も使ったという。国に認められれば、県側の負担は約170億円減る。ただ、青森県の要望は実現しておらず、県は青森県と協力して国に要望していくという。
このほか、車両維持費が安いディーゼル車にすると約60億円の軽減になるなど、試算にあたっては不確定要素があった。田中委員長はこの日の委員会後、報道陣に「我々では決められない部分が多く、幅が出た。今後は第三セクターや県、沿線自治体が共同して決めてほしい」と注文を付けた。
委員の1人で、第三セクターへの参加を保留している糸魚川市の本間政一副市長は「結果を持ち帰り、市民や議会に説明して次のステップに進みたい。うちだけ遅れるわけにはいかない」と話した。市は20日、この経営計画案などについて住民説明会を開く。(大内奏)