秋葉原殺傷事件:重傷の男性「風化させぬ」 若者受け継ぎ

2010年6月8日 11時56分 更新:6月8日 15時36分

事件のあった交差点付近で献花をし、手を合わせる被害者の湯浅洋さん(手前)ら=東京都千代田区で2010年6月8日午前6時48分、内藤絵美撮影
事件のあった交差点付近で献花をし、手を合わせる被害者の湯浅洋さん(手前)ら=東京都千代田区で2010年6月8日午前6時48分、内藤絵美撮影

 17人が死傷した東京・秋葉原の無差別殺傷事件から2年を迎えた8日、重傷を負った元タクシー運転手の湯浅洋さん(56)が事件について考える若者グループと一緒に現場を訪れ、犠牲者の冥福を祈った。「事件を風化させたくない」という湯浅さんの思いは、殺人などの罪で公判中の加藤智大被告(27)と同世代の若者たちに受け継がれている。

 8日午前6時40分、20~30代の男女約10人が湯浅さんとともに黙とう。事件当時の様子について、身ぶり手ぶりを交えた湯浅さんの説明に聴き入った。

 グループができるきっかけを作ったのは、社会問題に関する市民講座の企画などをしているNPO法人職員の京野楽弥子(さやこ)さん(29)。加藤被告と湯浅さんが手紙を交わして心を通わせようとしているのを知り、湯浅さんに連絡した。

 「湯浅さんの話を聞こう」。昨年末、インターネットで呼びかけると、大学院生や会社員ら約60人が集まった。これまでに計3回延べ100人以上が湯浅さんを囲み、事件について話し合った。

 若者たちは、加藤被告が事件を起こした理由を探っている。「居場所がなくて生きづらかった」「派遣切りで追いつめられた」。さまざまな意見は出るが、答えは見つかっていない。京野さんは「被告の心情に迫って議論することが、事件の風化を防ぐことにつながるはず」と言う。

 活動に賛同して現場で手を合わせた介護専門学校生の鈴木重光さん(38)は自身も「派遣切り」された経験がある。「心のどこかで被告に同情していたが、現場を見ると怒りがわいてきた。被告の動機を考え続けたい」と語った。【内橋寿明】

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