常用漢字:196字追加 文化審が答申

2010年6月7日 21時34分 更新:6月7日 22時2分

 文化審議会総会が7日開かれ、一般社会における漢字使用の新たな「目安」となる改定常用漢字表を川端達夫文部科学相に答申した。196字を追加して5字を削除し、現行(1945字)より191増の2136字になる。1946年制定の当用漢字表に代えて81年に常用漢字表を制定して以来29年ぶりの改定。パソコンの普及で「書けなくても読める」漢字が増えるなど社会の変化に対応した。年内に内閣告示の予定で、教育現場や活字メディアなどは対応を迫られている。

 「新たな漢字をどの段階で学ぶか。いつから教科書に反映させれば良いのか。文科省の指示がないと対応のしようがなく悩ましい」。小中学校向け国語の教科書を手がける「光村図書出版」の鷲巣学・編集本部長(59)が言う。

 学習指導要領では、中学卒業までに「大体の常用漢字を読め」、高校卒業までに「主な常用漢字が書けるよう」指導することになっている。ただ、追加される常用漢字をいつから、どのように教えるかは現段階では確定していない。文科省は近く教育専門家による有識者会議を発足させて、教育現場での対応を検討し、内閣告示に合わせて方針を示すことにしている。

 ◇いつから入試に?

 高校や大学を受験する生徒らにとっては、追加される漢字がいつから出題されるかも関心の的だ。現在、大学入試センターはセンター試験で出題する読み書き問題を常用漢字に限定し、2次試験や私立大も原則的には常用漢字から出題している。文科省は有識者会議で、入試への導入時期も検討するが、現行の常用漢字が制定された81年の場合、当時の文部省は85年度入試から使用するよう求めた。

 一方、常用漢字の改定で大きな影響を受ける活字メディアでは、既に準備も始まっている。国語辞書を手がける三省堂では、追加される漢字を盛り込む作業が進む。小学生向け辞書の場合は今回の改定に伴い新たに数十字が加わることになる。さらに、大人向け、子供向けに関係なく196字の脇に「常」のマークを付ける作業もある。「小学生向けも一般向けも細心の注意を払っています」。辞書出版部の武田京編集長(45)は言う。

 新聞各紙は常用漢字を基本に、新聞協会の申し合わせや各社独自の判断で常用漢字以外の漢字を一部追加して紙面で使っている。毎日新聞の場合は1990字を使用し、それ以外の漢字を使う場合はルビをふることにしている。

 新聞協会は現在、追加される常用漢字への対応を検討中だが、例えば「挨拶(あいさつ)」については「ひらがなの方が分かりやすい」と従来通りの方針を確認しており、必ずしもすべてを漢字使用に切り替えるわけではない。

 同じ活字メディアでも、雑誌の場合は、子供から各分野の専門家まで読者層も分かれており、漢字使用に関する共通指針がない。日本雑誌協会の表記委員長を務める講談社校閲局の大島伸局長は「ジャーナリズム系や文芸ものなどは以前から常用漢字以外の漢字も使ってきた。影響は子供向けなどに限られるだろう」と話している。【本橋和夫、井上俊樹、遠藤拓】

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