日本で初めてピンク映画を上映した老舗の「上野オークラ劇場」が老朽化のため8月1日に閉館する。代わってピンク映画館としては業界初の新館がオープン。ピンクの灯は消さない−とばかり、ド派手なイベントで再出発をぶち上げる。
東京の下町、アメ横のすぐ近くにある上野オークラ劇場。1951年に東映の封切館としてオープンしたが、62年に日本製ピンク映画の第1号とされる「肉体の市場」を公開して大ヒット。この作品でピンク映画というジャンルを打ち立てた大蔵映画のメーン劇場として71年からピンク専門館となり、ファンの男性たちに親しまれてきた。
開設以来59年。建物の老朽化には勝てず、ついに閉館する。斎藤豪計支配人は、「長年に渡って上野の街を照らし続け、さまざまな人の心も照らしてきた劇場が閉館してしまうのは、感慨深い」としみじみ。
フィナーレでは、「肉体の市場」に助監督として参加し、監督として400本以上のピンク映画を送り出してきた“ピンクの巨匠”小川欽也監督(76)を特集する。「自分の映画を何百本か、ずっとやってくれてた。59年だもんね。僕の映画生活といい勝負だ」と語る小川監督は、7月31日の閉館記念で舞台挨拶にも登場する。
若手や中堅の監督が腕を磨くピンク映画には新たな才能に先駆けて出会いたいという熱心な女性ファンが増えている。そこで、大蔵映画では、女性客とオールドファンに配慮して清潔なバリアフリーのピンク映画館オープンを計画。建物は旧館の向かいに完成し、8月4日から営業を始める。
不況の折、なんとも大胆な決断だが、斎藤支配人は「業界にとっても非常にポジティブな話題。世の中の流れからすれば、普通はこの閉館で終わってしまうところだが、長年ピンク産業を引っ張ってきた我々の意気込み、使命感が、新館建設へと踏み切らせた」と語る。小川監督も「劇場がどんどん消えていっちゃう中で、新しくなるのは良かったよね」と手放しの喜びようだ。
オープニング記念に1日から女性限定のピンク映画上映会を開き、上映前の新作「潮吹き花嫁の性白書」(竹洞哲也監督)と「多感な制服 むっちり潤い肌」(加藤義一監督)の2作をお披露目上映。新規ファンの開拓でピンク映画界の救世主になれるか。