本日の参院予算委員会をテレビで見ていて、仙谷由人官房長官のあまりの無礼さと嘘つきぶりに唖然としました。いやまあ、これまでもそういう人だとは感じていましたが、この人には内閣のスポークスマンは務まらないなと改めて実感した次第です。
予算委では、自民党の西田昌司氏が、仙谷氏が7日7日の記者会見で日韓が互いに請求権を放棄した日韓基本条約について「法律的に正当性があると言って、それだけで物事は済むのか。当時の韓国は軍政下だった」と述べた問題を取り上げ、「基本条約が有効ではないかのような発言だ」と指摘しました。すると、仙谷氏は激高してこう言い返しました。
「耳をかっぽじって刮目してお聞きいただきたい。有効でないような発言は(私が)いつしたんですか」
国会における政府答弁で「かっぽじる」ねえ。「いつしたんですか」も何も、実際しているじゃないですか。まあ、これだけなら「品のないいい加減な人だなあ」で済ませたかもしれませんが、続く質疑の中で、仙谷氏は堂々と嘘をついたのです。これは、いくら何でもいただけません。
仙谷氏は6月16日の記者会見で、西田氏を念頭に「(参院本会議で)罵詈雑言を投げつける質問をしたアッパーハウスの方がいた。国会でなければ名誉毀損の告訴状が3本も4本も出ざるを得ないような議論はいかがなものか」と発言していました。これについて西田氏が時事通信の配信記事を引用して「これは事実か」と問うと、仙谷氏は次のように答えたのです。
「私の記者会見等々の正式な発言ではなく、そういう非公式な雑談が書かれたとすれば、西田さんには誠にご迷惑をかけました」
これはひどいと、率直にそう思いました。紛れもなく自身が記者会見で述べたことなのに、「正式な発言ではない」と誤魔化し、さらに報道の在り方の問題へとすり替えています。まあ、本当に非公式発言だったと勘違いしていた可能性もありますが、そうであっても無責任だし、そうでなかったら卑怯極まりない。
仙谷氏は一つの典型例でしょうが、いわゆる「左」の人は本当に批判に弱いところがありますね。すぐに必要以上に警戒し、猜疑心を募らせ、あげく逆ギレする。全共闘のリーダー格だったわけだから鍛えられているかと思えば、むしろ甘やかされてちやほやされてここまで来たんじゃないかという疑問がわきます。
今とは時代の空気は違いますが、私が大学生だった20年ちょっと前には、中道ちょっと左寄りの発言をする人が多く、そういう人は誰からも批判されないのでずるいなあ、と感じていました。私はどちらかというと、というかはっきり「右」の方に傾いていたので、よく嘲笑されたり、バカにされたり、突っかかられたりしましたが。今でもその名残はありますが、以前は「左」の人の方が知的だというイメージが世間で流通していましたね…。
というわけで、関連するような気がするので、発作的に思いつきで過去に産経紙面に書いた書評を引用します。著者の姿勢に共感を覚えます。
《【書評】「二十世紀を精神分析する」 岸田秀著 「史的唯幻論」的に現代を読む [ 1996年11月21日
世界の歴史は病的現象として理解する必要があると、史的唯物論に対して“史的唯幻論”を唱える著者は主張する。
人間は行動規範である本能が壊れたため、代わりに自我を持った。その自我の起源を説明し、価値づけ正当化する物語がいるが、罪や不安、屈辱などの経験は自我の物語に好ましくない。そこで現実の経験を隠蔽(いんぺい)し、偽りの自我を築くが、偽りに基づく行動は、偽りを知る自我や周囲との関係に障害を与え、精神的に病む。このメカニズムは国家など集団の場合も同じ--というのである。
著者は二十年近く、精神分析の手法で目からうろこが落ちるような文明批評を続けており、本書は平成四年から今年までの文を集めたもの。
例えば、先の大戦における日本の役割をめぐる「侵略者か解放者か」の章では、皇国史観、東京裁判史観をともに一面的として、興味深い視点を提供する。
「ある主観が自己欺瞞かどうかを判定するには、行動とその行動がもたらした結果を見ればよい--中略--日本の対米英蘭戦争は現実の結果としてアジア解放をもたらしており、言ってみれば、主観と現実の結果が一致している」
「戦後賠償の問題」では「西欧のことは問題にしないでひたすら日本が払うべき賠償のことだけを言いたてる人」について、「日本はペリー来航以来、誇大妄想的自尊心を追求する内的自己と卑屈に西欧諸国に迎合する外的自己とに分裂し精神分裂病になった」と説明する。「アイデンティティが混乱し本来ならば対立しているはずの他者になってしまい、他者が言うようなことを言うのは精神分裂病者ではめずらしいことではない」
この章では「世間に何となく、最左翼が認められやすい雰囲気がある。そのためわたしは最左翼のほうを力を入れて批判した」とも書いている。戦後の外的自己の突出は、まだ続いている。 (文芸春秋・一五〇〇円) 社会部 阿比留瑠比》
おまけの写真です。本日、国会裏の衆院第2議員会館前あたりにあった立て看なのですが、輿石東氏の似顔絵が何ともおかしみがあり…。
by 047696
仙谷官房長官の国会における「…