【社説】発展もたらす基地建設を拒む済州

 済州道および済州道議会が2日、韓国政府に対し、済州海軍基地建設に関連する工事の中断を要請した。米国では、各自治体がそれぞれ便宜を図って軍事基地の誘致競争を繰り広げている。連邦議会の議員や州知事は、もともと地元にあった基地が閉鎖されることになれば、政治的に致命的な打撃を被る。地域に軍事基地が建設される場合、長期的に地域経済の発展にとって大きな助けとなるからだ。そこで歴代大統領は、ある議員の歓心を買ったり、あるいはその議員に仕返しをする政治的武器として、軍事基地の維持や閉鎖を使用することもある。議員の側も、地元の軍事基地関連の予算が削減されるのを防ぐため、国防総省に代わって駆け回る。ヨーロッパ諸国の多くでも、同様の状況にある。ところが大韓民国では、道知事や地方議員らが基地建設を阻止するために動いており、どちらが正常なのか、混乱してしまう。

 韓国政府は、今年から2014年にかけて、西帰浦市江汀村に軍事基地を兼ねた観光港を開発する予定だ。イージス艦をはじめとする韓国海軍の艦艇20隻余りと、最大で15万トン級のクルーズ船2隻が同時に接岸できる港を建設する構想だ。済州道にとっては、観光資源をもう一つ確保することになる。韓国海軍は、済州南方の海域における海上輸送の安全を確保し、有事の際に韓半島(朝鮮半島)周辺海域を守るに当たって済州海軍基地が必要だとして、2005年から基地建設計画を進めてきた。済州島南方の海域は、韓国の貿易物流量の99%を占める中心的な貿易航路で、ここを経由して毎日40万トンもの石油が供給されている。

 だがこの計画に対し、済州地域の一部の市民・環境団体や政党は、「平和の島になぜ軍事基地なのか」というスローガンを掲げ、基地建設阻止に力を尽くしてきた。現地住民450人は、韓国海軍が基地建設に必要な手続きを踏んでいないとして、基地建設計画を無効にして欲しいという訴訟も起こした。しかし、ソウル行政裁判所は先月、「海軍が環境影響評価を行って道知事と協議し、公聴会などで提示された住民の意見を反映する過程を経た以上、手続きには問題はない」という判決を下した。

 それでも済州道と道議会は、突如として「手続き的正当性」を口実に、工事の中断を叫んでいる。済州道は、海軍基地建設の代価として、何か大きなインセンティブを与えることを政府に要求しているという。要するに「工事中断」は、中央政府を圧迫するための交渉の手段というわけだ。米国のように、自治体が中心となって基地の誘致運動に乗り出してはいないにせよ、国家安全保障と済州発展のために必要とされる基地建設を、済州道自らがけり飛ばしている状況は、どうにも理解に苦しむ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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