北朝鮮の上流階級に本格的な脱北の動き

貨幣改革の失敗に加え体制に嫌気

韓流ドラマの普及も影響

 昨年12月に北朝鮮で貨幣改革(デノミネーション=通貨単位の切り下げ)が実施されて以降、脱北者の類型に変化がみられることが分かった。貨幣改革以前は、北朝鮮で社会的身分が低く、生活が苦しい階層が主に脱北を試みる傾向があった。脱北者の間では、「北朝鮮で飢え死にするのも、逮捕されて殺されるのも同じ」という考えを持つケースが多かったという。

 ところが貨幣改革以降に関して、安全保障関連部処(省庁)のある政府関係者によると、「中産層以上が脱北するケースが増えている」という。北朝鮮のある情報筋も3日、「貨幣改革の失敗で、民衆は政府に嫌気がさしている。また、ビデオやDVDなどを通じて韓流ドラマが北朝鮮にも普及する中、中産層以上の脱北が増え始めた」と語った。北朝鮮でも生活に支障はないものの、金正日(キム・ジョンイル)総書記が支配する体制に嫌気がさし、より自由な生活を求めて脱北を目指すということだ。金策工業大学を卒業したAさん(26)も昨年末、「ほかの勉強がしたい」という理由で、北朝鮮を脱出した。Aさんは「党は電子工学を勉強するよう命じたが、わたしはそれに興味がない。今は自分がやりたかった生化学の勉強をすることができ、とてもうれしい」と語る。

 とりわけ最近は、貨幣改革の影響で財産を失った市場勢力(街中の市場などで金を稼いだ人たち)の間でも、脱北を試みるケースが増えているという。韓国政府の当局者は、「最近は監視が厳しくなっているため、脱北するにはブローカーや北朝鮮の国境警備隊にかなりのわいろを握らせなければならない。そのような金があるということは、中産層以上の身分か韓国に親せきがいるということだ」と述べた。こうした中、北朝鮮の地方保衛部幹部といった上流階層出身の脱北者が、非公開で韓国にやって来るケースも増えている。彼らは一般の脱北者のようにハナ院(脱北者定着支援施設)には入所しないため、脱北者の統計には表れない。

 今年に入って、北朝鮮が脱北者の取り締まりを強化しているのも、中産層以上の脱北を深刻に受け止めているためとみられる。北朝鮮の2大公安機関、人民保安部と国家安全保衛部は今年2月に「連合声明」を発表し、その中で脱北者を「人間のクズ」と表現した。3月には「民族和解協議会」の報道官が談話を発表し、韓国国内の脱北者団体をすべて名指しした上で、「最初の処断対象になるだろう」と脅迫した。また6月からは、中国などに「脱北者逮捕組」が派遣されているという。中央大学のイ・ジョウォン教授は、「北朝鮮としては、後継者世襲を前に体制が動揺するのを放置しているわけにはいかないのだろう」とコメントした。

姜哲煥(カン・チョルファン)記者

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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