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新石垣空港滑走路下 崩落恐れ指摘

2010年07月28日

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洞窟の崩壊防止のためのシェルター。=09年5月、沖縄県石垣市白保。「八重山・白保の海を守る会」提供

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 沖縄県・石垣島で県が建設を進めている新石垣空港について、県の委託で一帯を調査した洞窟の専門家が、滑走路直下にいくつもの洞窟があり、崩壊の危険性があると指摘している。安全対策として「最低3年のくわしい調査が必要」との報告書を上げているが、県はこの調査はしていない。一部の洞窟については崩壊防止工事を施したが、その有効性も疑問視している。

 危険性を指摘しているのは元日本洞窟学会副会長でNPO法人・沖縄鍾乳洞協会の山内平三郎理事長(62)。県から委託され、滑走路直下の洞窟など=図参照=について2004年から3度にわたり調査し、報告書を提出した。

 06年4月の報告書によると、E洞窟内には地下川が流れ、壁がもろい砂層であることが判明。降雨や流水による浸食を受けやすい状態だった。洞窟内壁の剥離現象も確認し、剥離が大きい部分36カ所、それとは別に「非常に危険な部分」5カ所を挙げた。

 また、滑走路建設で地表からの水分補給がなくなれば洞窟の上部を覆う石灰岩層のブロック化が進むと指摘。「石灰岩の湿度が落ちるとブロック間の間隙が広がり、ここに水が流れ込むと一挙に崩壊する」としている。

 このため、安全対策として洞窟内の気温変化などの影響を調べる必要性があるとして、「最低3年のデータで作業を始め、随時検討することもできる。空港の設計は、この作業が進まない限り行うことはできない」と提言した。だが、県は洞穴の調査をすることなく、06年10月に工事に着手した。

 県はこれまで安全性について判断する建設工法検討委員会を10回、建設工法モニタリング委員会を5回開いた。洞窟の崩壊防止工事を決めた第10回の建設工法検討委を含め、両委員会の議事録には山内理事長の報告書を検討したやりとりは見あたらない。

 県が行った崩壊防止工事はE洞窟とA洞窟の上に半円形のシェルターを設け、直接洞窟に盛り土がかからないようにして、圧力を減らすもの。しかし、この対策についても山内理事長は「落盤によって洞窟内の地下川の水流が変われば、砂層を削って洞窟の幅が拡大し、シェルターの基礎までが崩壊する危険性がある」と警鐘を鳴らす。

 県の栄野川盛信・新石垣空港統括監は「山内理事長の指摘を無視したわけではなく、それを踏まえて対策を検討している。滑走路の上から大きな加重をかけて強度を調べる新たな調査も検討中だ」と説明している。

 この問題については、滑走路直下にこれまでに確認されていない洞窟がある可能性を指摘する研究者もいる。

 学術調査委員会の一員として建設地を調べた大阪経済法科大の浦田健作客員教授(カルスト学)は、県が実施した電気探査で「空洞の可能性が高い」と指摘されながら、空洞が見つかっていない場所が数多くあるという事実に着目する。実際に、県が国土交通省の空港設置許可を受けた後に、日本最古の約2万年前の旧石器人の骨が発見されたC1洞窟などが新たに見つかっており、浦田客員教授は「空洞が崩壊する強度を考慮しないまま滑走路を造れば、非常に危険。そのためにも調査が必要だ」としている。

【新石垣空港】 石垣空港の代替として県が1976年に計画を策定した。自然環境を壊すという根強い反対運動があったが、計画策定から30年後に着工。13年3月の開港を予定している。総事業費は420億円。

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