鉄道事業者の女性職員をフィギュア化した人気シリーズ「鉄道むすめ」については、このコネタで昨年秋、岩手県で開かれた「鉄道むすめサミット」を取り上げたが、これに追随する動きが各地で起こり始めている。「鉄道むすめ」のイラストをあしらった記念切符やグッズ類を、各鉄道事業者独自で売り出して、イメージアップを狙う作戦だ。
そんな中で、いま目立って盛り上がりを見せているのが、埼玉県北東部の町、栗橋だ。「鉄道むすめ」のキャラクターの一人、「栗橋みなみ」を地元商工会のイメージキャラに抜擢し、町おこし事業を展開、この8月1日には一大イベント「栗橋みなみ夏祭り」を開催してしまった。
祭りでは、日本酒やお菓子、シャンプーなど、栗橋みなみのイラストが添えられた地元のお店ごとに開発したオリジナル商品・限定グッズの販売や、地元の高校生たちによるミニ鉄道車両の乗車運転、全国から募集した「栗橋みなみ似顔絵コンテスト」の優秀作品の展示などが行われた。
さらにイベントの目玉として、「鉄道むすめ」のキャラクターソングを歌っている声優の河原木志穂さん(京成電鉄の中山ゆかり役)と能登麻美子さん(東武トラベルの渡瀬きぬ役)によるトークショーが開かれ、地元の人々だけでなく県外からやってきた鉄道ファン、声優ファンなどで大いに盛り上がった。
そもそもこの「栗橋みなみ」、発売元のトミーテックの設定では、東武鉄道北千住駅に勤務する女性駅務係で、東武伊勢崎線の南栗橋駅からその名は由来している。
ここまで栗橋が盛り上がりを見せている最初のきっかけは、2年前、地元の高校生からの提案からだったという。せっかくの名前を地元の町おこしに使わない手はないとの話から、手始めに商工会独自で制作した栗橋みなみフィギュアを、地元で毎年行われている東武鉄道のイベントで販売してみたところ、用意した1300体が瞬く間に完売した。
手応えをつかんだ商工会は、今年2月から「栗橋みなみスタンプラリー」を実施し地元での浸透を図ってきた。並行して各店舗独自の栗橋みなみグッズも各種発売され、日本酒には遠く北海道からの注文もあったという。この8月からは、商品を買うごとにイラスト入りオリジナル名刺がもらえる「名刺ラリー」も始まった。
ここまで町おこしに熱心になる背景には、ある危機感があった。商工会事務局長の渡邊さんは「今年3月に合併して久喜市となったことで、旧栗橋町の名前が消えていってしまうのかもしれない恐れを感じていた」という。
だが、幸いにも合併した新生・久喜市にはアニメ「らき☆すた」で町おこしに成功している鷲宮町も同居しており、栗橋にとっては格好のお手本になりそう。ひょっとしたら栗橋みなみとのコラボレーションもアリかも?
(足立謙二/studio woofoo)