2010年8月4日0時12分
アメリカ経済の低成長が長期化しそうだ。企業経営者の景気見通しが慎重で、雇用が増えない。賃金も上がらないから、家計の消費は伸びない。成長を支えてきた財政からの刺激も効果が薄れてきた。総需要が弱いから、物価が上がらない。来年にはデフレに陥る恐れが小さくない。
そういう状況なのに、アメリカでは景気対策を求める声が意外に強まらない。財政赤字が増大し、金融政策も尽きた中で、低成長・低インフレから短期間に抜け出す魔法の杖(つえ)がないからだ。その代わりに強まっているのが、アメリカ発展のメカニズムを見直して、閉塞(へいそく)を打破しようという動きだ。
民主党の「大きな政府」は民間活力をそいだ一方、政府も財政赤字の制約で身動きがとれなくなりつつある。これではアメリカは衰退してしまう――。この危機感が国民の関心を「メカニズム」見直しに向かわせている。勢いを増しているのが、歳出削減と減税を主張する野党=共和党である。
国家主義を否定し、民間創意による成長を信じるのがアメリカの伝統だ。低成長・低インフレの長期化でいささか自信喪失気味のアメリカは、この原則に戻って経済再生を図る可能性が高い。秋の中間選挙に向けて、政治家もマスコミも成長の仕組みを議論する。そのことだけでも、人々は将来をイメージしやすくなる。経済が前向きに動き出すきっかけになるだろう。
翻って日本。「仕分け」も「消費税」も大事な論点ではあるが、部分に過ぎない。日本経済はどういう道筋で復活を遂げるのか。政治家はあらすじを示す必要がある。参院選で国民が議論し、得たものは何だったのだろうか。(柴犬)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。