ニュース「漫画トレースもお互い様だが……」 竹熊健太郎氏が語る、現場と著作権法のズレ (2/2)2008年04月16日 15時35分 更新
だが出版界は同人誌を黙認している。「まず、数が多すぎてとてもじゃないがクレームを付けきれないのと、『パロディ化されるのは人気の証拠』と考えているから」 パロディから出た同人作家が、オリジナル作品を作り始めるケースも多い。また、商業誌でオリジナルを描きながらパロディ同人誌を出し続ける作家もいる。 ちなみに「パロディという言葉は、昔の使われ方と変わっている」と竹熊さんは指摘する。「70〜80年代には有名な原作の権威を笑う、批評的なものがパロディだったが、コミケのパロディは原作に対する愛情の表明で、オマージュだ」 同人誌作家が著作権法違反で逮捕された例もある。99年、「ポケットモンスター」の18禁同人誌を作っていた作家が逮捕された。告訴したのは任天堂で、小学館は動かなかったという。「出版社は、著作権絡みの裁判を自分から起こすのを避ける傾向があると思う」 2次創作を容認する企業もユーザーによる2次創作を容認するコンテンツ企業も出始めている。「美少女ゲームメーカーは、同人誌などゲームのキャラクターを使った同人活動を積極的に奨励している。意識を変え始めた企業が増えている」 竹熊さんは、クリプトン・フューチャー・メディアの「初音ミク」にも言及。初音ミクを使って作られた楽曲作品が日本音楽著作権協会(JASRAC)に登録された際、同社の伊藤博之社長がブログに「初音ミクを当社がJASRACに登録することはあり得ない」と書き、ミクの自由な利用を認めていることを紹介した。 グレーはグレーのままでいいのか
野口さん
漫画出版や同人誌の世界は“グレーな”状態のまま回り続けている。クリエイティブ・コモンズ(CC)の野口さんは「グレーなままでやっていけるなら、わざわざ白黒付ける必要はない、という意見もあるが、グレーと言われているものは、出る所に出れば黒だ」と指摘する。 「違法でも見つからない、問題にならないのがグレー。そのままだといつ人に刺されるか分からないし、どんなにいい作品でもメジャーでは売れない」(野口さん)。境界をクリアにし、合法化していく作業は必要と話す。 田村さんは「グレーをホワイトにしようとすると立法問題になり、ブラックにする方向の動きが必ず出てくる。ブラック寄りの人のほうがロビーイングパワーが強いから、ルールはブラック寄りになってしまうだろう。フェアユースのように、司法で解決するための仕組みを作る努力が必要だろう」と話した。 山形さんは「想定していなかった利用がグレー分野になる」と指摘。「PC上で人格が作れるようになった場合、どうなるだろうか。例えば、僕のような文章を自動生成するジェネレータで作った文章を、僕の声をサンプリングしてリアルに発生できる音声合成で読み上げた場合、その文章の著作権はどうなるのだろうか」という思考実験を披露。技術の進化に伴い新たなグレーゾーンもできてしまうことを指摘した。(関連記事:初音ミクは「権利者」か) 人格権と財産権の“グレーゾーン”竹熊さんは「著作権の人格権と財産権が現場ではごっちゃになっている」と話す。森進一さんが歌詞を改変して歌ったと問題になった「おふくろさん」について、日本音楽著作権協会(JASRAC)が見解を発表したことについて「JASRACは財産権を管理する団体で人格権を関知しないはずのに、人格権の問題で動いた」と指摘する。 「出版の世界でもJASRAC的な機能を持った集団を作るべき」という議論もあるという。「JASRACはいろいろ批判もされるが全部金で解決でき、金さえ払えば使える点がいい。だが人格権が入ってくると感情として『使われたくない』と言われ、どうしょうもなくなる。漫画評論でも、サザエさんなど『この作品のキャラはわが子同然だから使われたくない』と言われることが、現実には多い」 関連記事
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