コンピューターウイルス「イカタコウイルス」を仕込んだ偽の音楽ファイルをファイル共有ソフトを通じて受信(ダウンロード)させ、パソコン内のファイルを壊したとして、警視庁は、ウイルス作成者で会社員中辻正人容疑者(27)=大阪府泉佐野市中庄=を器物損壊の疑いで逮捕したと4日発表した。同庁は、ファイルを「器物」ととらえ、ウイルスを感染させる行為に初めて器物損壊罪を適用した。
中辻容疑者は2006年ごろから感染が広がった「原田ウイルス」を作成したことで知られ、大学院生だった08年、「原田」の亜種ウイルスで著作権を侵害したなどとして逮捕され、有罪判決を受け執行猶予中。「前回逮捕されてから自分のプログラミングの技術がどれだけ向上しているかみてみたかった」と供述しているという。
同庁ハイテク犯罪対策総合センターによると、逮捕容疑は、5月にファイル共有ソフト「ウィニー」上にテレビアニメの音楽ファイルに見せかけた「イカタコウイルス」を配信し、ダウンロードした30代の無職男性のパソコンを感染させ、ハードディスク内のファイル約6万4千件のうち約1万1千件を壊したもの。
センターやウイルス対策大手トレンドマイクロによると、ダウンロードした同ウイルスが仕込まれたファイルを開くと、ハードディスク内に保存されているすべてのファイルが感染。イカやタコ、ウニなどの漫画風の画像に上書きされ、どのファイルを開いても同じ画像が現れる。上書きされたファイルの復元は困難とされ、器物損壊罪にあたると判断した。
また、同ウイルスに感染すると、パソコン内のデータが中辻容疑者が設置するサーバーに送信される仕組みで、中辻容疑者は「5万人分のデータが保存されている」と供述。警視庁はこのうち2万件を確認している。