2008-06-18 「企業間連携」を考えるフレームワークを考えてみました
最近、要求される技術レベルは益々高度化し、また製品のライフサイクルはどんどんと短くなるばかり。開発費を回収する間も無く、次の開発をスタートしないといけない。。開発⇒市場投入の時間をできるだけ短くしていかないと、事業のサイクルが回っていかない厳しい事業環境にあると思っております。。厳しい。。
そんな中、一企業単独でできることにはどうしても限界があり、この難局を「企業間連携」で乗り切っていこうという企業も多いですよね。皆さんもお仕事で「この技術を実現するために、どの企業とどのように提携すればいいか。検討してほしい」という依頼が上司からあったりしませんか?
私もそんなことがあったりするんですが、以外と「企業間連携」を考えるフレームワークがないことに不便さを感じておりました。そんな中いい著書にもめぐり合いまして、それをベースに自分なりにアレンジしたものをご紹介したいと思います。
企業間連携のマトリックス・フレームワーク
下記の資料は、企業間連携を「1.提携の範囲」「2.補完する経営資源」のマトリックスで4つのタイプに分類し、かつ各タイプについて「3.提携の形態」で分類しようと試みたものです。
「1.提携の範囲」とは、要するに提携する相手が同業界か異業界か。食品メーカー同士の提携が同業界。食品メーカーと小麦粉メーカーの提携が異業種。「2.補完する経営資源」とは、2つの企業が提携して何かをやろうとするとき、持ち寄る経営資源(ヒト、モノ、カネ、技術、情報など)が同一か、異なるか。お互いがお金・ヒトを出し合うケースは経営資源が同一、片方がお金を出すが、片方は技術を出すというのが経営資源が異なるケース。
そして「3.提携の形態」とは、「提携関係の強さ」を表しています。資本関係が強いと提携関係が強いと考え、逆に資本関係が少ない又はない場合は緩やかな提携関係であると考えます。
この3つの視点=フレームワークで企業間提携を捉えることにより、具体的な提携のスキームを作りやすくなるのではと思っています。
たとえば、先日発表された「GoogleとYahooのインターネット広告における提携」は基本「4.機能の分担」、そしてGoogleから見れば「1.規模の経済性追求」も視野に入れている感じでしょうか。
この4つの中で、一番難しいなと思うのは、「2.能力の補完」ですね。異業種企業が同じ経営資源を持ち寄る提携ってあるのかなと思うのですが。。
本日発表になった、東京三菱UFJ銀行とKDDIが提携し、「じぶん銀行」というモバイルネットバンキングサービスを始めるという事例。両社折半で出資、準備会社を設立し、両社がヒトも出し、両社が持つノウハウを持ち寄ってサービスを提供するとのこと。
これは異業種提携、かつお金とヒトを出すという意味で同じ経営資源を持ち寄る提携ですが、一番キモであるノウハウについては、かなり異なるノウハウでしょうね。なので明確に「?能力の補完」とは言えない面もあります。
ここでは、異業種が提携し新しいものを作り出す提携が「2.能力の補完」、より顧客と供給者という色が濃い異業種間提携が「?顧客・供給者の統合」と考えています。
どうやってフレームワークを使うか
私自身もこのフレームワークを使い始めているのですが、下記のSTEPで検討を進めると、具体的な提携スキームを考えるのに結構重宝します。
なんでもそうですが、「何をやりたいのか(What)」を「なぜそれをやりたいのか(Why)」とのセットで考えて、明確にするのが一番大事ですね。ここがぶれると、後で大変なことになります。実際の提携先候補との交渉では、この「何をやりたいのか」が一番重要になりますし、提携が始まった後でも、提携先と「何をやりたいのか」を共有できないと、なかなか成功には結びつきません。
また、提携がスタートすると、9割9分の確立で「事件」が発生しますが、その時にこの「何をやりたいのか」に立ち返り、振り返り、また思い直してスタートするということがよくありますので、ここが一番重要だと思ってます。
あとはこの順番に進めていくと、以外に頭が整理されます。ただ「?構想をフレームワーク上に位置づけ、ビジネスモデルを形づくる」で言っている「ビジネスモデル」って何なんだというのは突っ込みを受けそうですね。
私は、「実際のビジネスフローやステップを書いてみて、そこに自社と提携先の役割を書いてみて、それがある程度出来上がってきたら、具体的なスケジュールに落とし込んで見る」という作業をすることが多いです。
スケジュールを引いてみると、この企業間提携のゴールを達成するために「何をやらないといけないのか」ということが、わかってきます。そこで漏れ抜けを発見し、ビジネスフローに立ち返り、修正を入れてまたスケジュールに、という感じで何回か行ったり来たりをやりますね。そしてスケジュールを明確にすると、「やりたいこと」を提携先とも共有しやすいですね。
今後益々企業間連携は増加すると思います。今回のフレームワークを参考に、自分なりにアレンジして、うまく使って頂けるとうれしいなと思います。
今回下記の著書が大変参考になりました、企業間連携についての著書は少ないですが、網羅性があり、大変良い本だと思っています。
- 作者: 安田洋史
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2006/02
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