費用面での競争力の強さは無視できない。ベトナム国会は6月、ハノイ―ホーチミン(約1600キロ)の高速鉄道建設計画案を否決した。同案は日本の新幹線方式を採用する見通しだったが、560億ドルといわれる投資額に「負担が大きい」との反対が出たためだ。中国の高速鉄道なら、「費用は新幹線の半分」(中国紙)とされる。
海外進出を強める背景には、政治的な狙いも指摘される。鉄道省は7月、雲南省から国境を接するミャンマー(ビルマ)やラオスにそれぞれ国際高速鉄道を建設する計画を明らかにした。詳細は不明だが、自由貿易協定(FTA)の実施が始まった東南アジア諸国との輸送能力の拡大を目指すもの。実現すれば、両国における中国の政治的な存在感が一層高まることは間違いない。
中国の専門家の中には、(1)中国北部からロシアへ(2)中国西部からカザフスタン経由で中央アジア諸国へ(3)中国南部からベトナム経由で東南アジア諸国へ……との三つの国際高速鉄道の建設の必要性を訴える論調も出てきている。
■価格競争力、中国にかなわず
中国の高速鉄道の一部は日本の新幹線技術をもとに導入された経緯があり、中国にとって日本は先輩格。その中国が積極的な鉄道輸出を進め、日本と競合し始めていることに、日本の鉄道関係者は複雑な心境だ。
7月に告示されたブラジルの高速鉄道計画。ルラ大統領が2016年のリオデジャネイロ五輪までの開通を目指す国家プロジェクトだ。リオ―サンパウロ間のエコノミークラスの料金を一番安く設定出来る事業者が落札するとの見方が地元で飛び交う。
日本は価格競争力では中国にかなわない。運行や建設まで受注者が担うなどリスクが高い案件ともいわれ、日本の企業連合は採算を慎重に見極めている。