Hatena::Diary

ちょっと違うんちゃうNEO このページをアンテナに追加 RSSフィード

著作権保護期間延長に反対します ミス・サイゴンBLOG

2008-10-01

[]日本演劇協会は日本音楽著作権協会JASRAC)よりも恐ろしい!?

著作権法第38条1項*1は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています。*2

しかし、著作権法にこのような著作権制限規定があるにもかかわらず、日本の演劇界では、無料での上演に対しても上演料(著作権使用料)を要求するのが一般的です。


そこで、今日は、著作権法第38条1項に対する日本の演劇界の対応について、日本演劇協会と日本音楽著作権協会JASRAC)との対応の違いを手がかりに、みていきたいと思います。


まず演劇界の現状を見てみましょう。

社団法人日本演劇協会*3は、次のように定めています。

公共演劇[アマチュア]演劇上演料金(基本料金)


入場料無料 1時間30分以内 10,000円 1時間31分以上 20,000円

(中略)


・尚、高校演劇に関しては(入場無料の場合)上演時間にかかわりなく、上演1回につき、5,000円とする。

以下略*4


なぜ、アマチュア(高校演劇を含む)の入場料無料の公演に上演料が発生するのでしょうか?

この点について、この規定は一言も触れていません。


ちなみに、日本演劇協会のサイトによると、同協会は、「我が国の演劇の向上及びその発展を図り、我が国文化の高揚に寄与し、同時に演劇関係者の社会的地位を確立すべく昭和26年(1951年)に設立された、国内の演劇に関する統括団体」だそうです。*5


しかし、協会事務局の電話に出られた方によれば、日本演劇協会の会員はプロの演劇関係者だそうで、アマチュアとのつきあいはほとんどないそうです。*6


このような社団法人に、法律(著作権法第38条1項)を無視して、一般に行われるアマチュアによる無料の演劇公演に対して、上演料の支払いを事実上の強制するような権限がないのは(たぶん)明らかでしょう。

しかし、日本演劇協会の規定は、結果として(しかし、おそらく協会のねらい通りに)、日本で行われる無料の演劇公演において上演料の支払いを強制し、その相場を決定する役割を果たしています。


たとえば、以前も紹介した*7NODA・MAP(日本を代表する劇作家・野田秀樹さんのマネージメントをおこなっています)のサイトを見てみましょう。

上演許可について


野田秀樹の戯曲を上演なさりたい場合、上演許可証が必要となります。

大変お手数ではございますが、 上演予定日の1ヶ月前までに申請なさってください。


<アマチュア劇団、学生による上演>

上演申込書を提出していただきます。大変お手数ですが、上演申込書はこちら(PDF)からダウンロードをしていただき、 FAXか郵送にてお送りください。

脚色、潤色、カットがある場合は台本の確認が必要となります。

☆上演料は、社団法人 日本演劇協会の規定を踏まえ、下記ノダマップの定める料金となります。


有料公演 ¥20,000

無料公演 ¥10,000*8


どうでしょうか。

「上演料は、社団法人 日本演劇協会の規定を踏まえ」て定められているわけです。*9


そこで、かの有名な日本音楽著作権協会JASRAC)の対応を見てみましょう。

JASRACのサイトから引用します。

コンサート、ダンス・演劇の公演、オペラ等の上演などに音楽をご利用の場合には、事前にJASRACに利用申込手続きをとり、許諾を受けてご利用ください


■ 開催される催物によっては、JASRACへのお手続きは必要ない場合がありますので、ご不明な点はお気軽にご相談ください。

■ 下記の(1)・(2)のいずれかに該当する催物は、申込書類のご提出は必要ありませんが、念のため、各支部までご連絡いただけますようお願い申し上げます。


(1) (略)

(2) 著作権法第38条1項の規定に該当することにより自由利用が認められる場合

※(以下の3つの要件をすべてみたす場合のみ)

・営利を目的としない

・聴衆または観衆から入場料(いずれの名義をもってするかを問わない)を受けない

・出演者に報酬(ギャラ)が支払われない


※ 下記A〜Dのような催物は、第38条1項の自由利用の範囲にはあたらず、お手続きが必要となります。

A:営利法人(株式・有限会社など)・営利を目的とする団体または個人が主催・共催のとき

B:特定の商品やプログラムなどを購入した方でなければ入場できないとき

C:年会費などの会費を徴収し、それらの会費で運営されるとき

D:出演者に交通費・宿泊費などの実費を超える金銭・常識的範囲を超える物品等が渡される、 または出演者のCD・カセットテープ販売など実演家の収益につながるようなサービスを条件に実演家が出演するとき *10


どうですか?

JASRACは、ちゃんと法律(著作権法第38条1項)にしたがった取り扱いをしているのです。

私は、これが普通の対応だと思うのですが・・・。

よく見ると、「念のため、各支部までご連絡いただけますようお願い申し上げます」と書かれていますが、日本演劇協会のように、十分な説明もないままに有無を言わさず上演料を要求するのとは違います。


っていうか、演劇界の方々は、いったいこのことをどう考えているのでしょうか?

まさか、同一性保持権(著作権法第20条*11)を根拠に、演劇の場合はほとんどの場合に著作権法第38条1項の適用がなくなるから、一般的に上演料の支払いが必要になる、とかいう主張をされるのではないでしょうが・・・。

同一性保持権を言うなら、音楽の世界でも多かれ少なかれ事情は同じでしょうから・・・。*12


ということで、かのJASRACよりも恐ろしい団体、それが日本演劇協会であり、日本の演劇界なのです!?*13

*1:公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

*2著作権法第38条1項の著作権制限規定については、私の先日の記事を参照してください。http://d.hatena.ne.jp/chigau/20080918http://d.hatena.ne.jp/chigau/20080923

*3http://www.jtaa.or.jp/

*4:なぜかこの規定はweb上には公開されていません。私は同協会の事務局にお願いしてFAXしてもらいました。

*5http://www.jtaa.or.jp/gaiyou1.html

*6:日本演劇協会の会員一覧は以下のページを参照してください。http://www.jtaa.or.jp/kaiin181.html。なお、私がネット上で確認したところ、日本演劇協会の平成19年・20年度役員の方は全員がプロの演劇関係者です。http://www.jtaa.or.jp/jtaayakuin1.html

*7http://d.hatena.ne.jp/chigau/20080820

*8http://www.nodamap.com/site/query

*9:しかし、日本演劇協会のサイトにある会員一覧には野田秀樹さんの名前が見あたらないのが気になります。http://www.jtaa.or.jp/kaiin181.html。なお、NODA・MAP以外の事例については、以下の記事を参照してください。http://d.hatena.ne.jp/chigau/20080820。NODA・MAPのサイトでは、上演料は日本演劇協会の規定を踏まえて定めたと明記しているだけまだマシで、私の調べた限り、一般的には、全く理由や根拠を示すことなく上演料の支払いを求める著作者が多いようです。

*10http://www.jasrac.or.jp/info/event/bepro.html

*11:著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

*12:私はここで、同一性保持権を無視してよいというつもりは毛頭ありません。アマチュアの演劇公演には、同一性保持権を侵害するものもあるでしょうが、同一性保持権を侵害しない公演もあるはずで、著作権者は両者をきちんと分けて対応すべきだと思うのです。

*13:日本演劇協会は著作権管理事業を行うのがメインの組織ではなく、「脚本料、演出料、装置料、照明料、音響効果料、執筆料、著作権使用料その他基本料金の設定維持並びにその理想的運営」は、8項目ある演劇協会の事業のなかの1つにすぎません。http://www.jtaa.or.jp/teikan1.htmlですから、著作権管理事業を行うための社団法人であるJASRACと全く同列に論じるのには、もちろん限界があります。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/chigau/20081001/1222823811