日本の電子書籍が少し見えてきた?(ちょっとまとめてみた)
ブックフェアではGoogleの発表(それもそれほど画期的ではないのだが)とiPadに持っていかれた感があった日本の電子書籍対応、ここに来て少し動きが出てきたので、海外のものも合わせちょっとまとめてみたい。(長くなります)
ただ、Google ブックスは現状、雑誌は展開していない。それとも雑誌そのものがウェブになり、無くなってしまうということも十分に考えられる。
◆まず、電子書籍の形態
形態というのは、私たちが電子書籍を触った時の様子。動くとか、テキスト抽出できるとか、インテラクティブとか。
実はフォーマット云々よりこっちのほうが大事。
(1)テキストをそのまま電子化したもの
Kindle、iBook Store で見れるのはこの形で、それぞれの専用ソフトで見る。携帯小説もこの形かな。既存のテキストを電子化しただけで、PDFに近いかも。
◯:テキストなのでテキスト抽出が可能。実例としては辞書検索、Twitter連携などがある。
フォーマットとしてはePubやAZWなどがあり、ePubはこのようなソフトで簡単に作れる。(XML 変換ともいうのかも。)
×:アニメーション等の動きはないし、動画は埋め込まれていない。
(2)アプリ形式
最近日本で作家+出版社のコラボで次々と発売されるのがこの形。アプリ形式で配信されることが多いのでその作品ごとにアプリのインストールが必要。またこんな次世代の教科書風のも実現可能。PCゲームのような動きがあるものも作れる。FLASHに近いかも。
◯:アニメーション等の動きをつけて、今までの本とはまったく違ったスタイルのものを実現可能
×:簡単には作れない。フォーマットがバラバラでアプリを何個もインストールする形になる。何でもいいので、ただ誌面を見せるだけのもの(今までの本以下の体験)も作れる。
この2つにだいたい分けられるか。
この他に面白いなと思ったものは、(1)に動画・音声を埋め込むものでこういう形のもの。
ウェブでやっていることを電子書籍で実現するということだが、この形のキーワードはhtml5。ビデオタグやオーディオタグにより、音声や動画を非常に扱いやすくなっている。個人的にもちょっと何か作ってみたいもの。
◆次に、フォーマット
「電子書籍の形態」に沿ってまとめると
(1)テキストや画像をそのまま電子化したもの
Amazon Kindle(AZW)、Apple iBookStore(ePub)、ボイジャー 理想書店(T-timeなど)など
この形のサービスが最も多く、これが今後の電子書籍の形になると思う。フォーマットとしてはePubがオープンなフォーマットであることからも一番有利。calibreのように既存のPDF などを簡単にePubにできるソフトも出ている。
AmazonがePubに移るのか、AppleのAACのような形をとるのか。ePubにしたほうがユーザーにとっては統一ということからも嬉しいのだけど、iPodが成功したからAACでやっていけてるように、Kindleがハード・ソフトとしてユーザーを増やせれば、コンテンツの数を理由にしてAZWのままということも十分にありうる。ePub→AZWも簡単に出来る。
発売後コンテンツを あまり増やせていないiBookStoreは失敗になるのではないかと思う。
T-timeやシャープのXMDFのように日本独自の規格を作ろうとしている動きもあるようだけど、これは反対。というか音楽配信の流れをみるように必ず失敗する。
日本独自の規格を作る根拠として、ルビや縦書き対応があるみたいだけど、個人的にはこれはどうでもいいと思う。
特にルビが必須だとは思わないし、辞書検索などで補えるのではないか。
日本独特の縦書きレイアウトは難しく、禁則処理とか字下げとか非常にめんどくさいルールがたくさん存在し、おそらく外国の方だけでは難しいと思う。上手くePubに組み込めるといい(たぶん技術的には可能だろう)のだけど、優先事項かというと、優先事項ではなく、コンテンツがある程度そろってから、あとで縦書き対応でいいと思う。
「縦書き対応しなければ
日本で流行らない」は根拠があまりないかな。縦書きだろうが横書きだろうが体験が重要なわけだし。ボイジャー・青空文庫とかでは複雑な縦書き処理が実現できているので、その辺が自分だけで固まらないで、技術提供などすれば、まあ縦書き対応のePubもできそうな気もする。
ただ、まずはコンテンツを揃えるのが大事。とりあえず横書きの小説でもいいのではないのかなあ、また違った新鮮な感じで。
(2)アプリ形式
パピレス、EbookJapan、講談社 京極夏彦など、Zinio 等
このフォーマットの特徴は、見るだけというもの。なのでここの仲間には、スキャン画像の集大成「Googleブックス」も入れたい。
すごいリッチなアプリケーションブックを作ることもできれば、マーカーを引いたり付箋をつけることもできない従来の本以下のものも作れるこの形式。
この形式が威力を発揮するのは、雑誌などのレイアウトが複雑なもの。ePubは所詮はXMLなのでこういうものは不得意。
Kindleでテキストだけを抽出したものを読んでみたけど、ビジュアルではなくて面白くないし、(記事を集中して読めるというのはあるけど)
また、特に外国の雑誌は最近webで大体が公開されているので、それと大差はない(場合によってはそれ以下も)。
また雑誌は割とじっくり読むよりは短時間で読むことが多いので(「ユリイカ」はePub向け。今発売の電子書籍特集は興味深いのだが、読み切る自信がない。)、付箋とかの機能もあまりいらないのかもしれない。雑誌で必要なのはアーカイブ用途で、検索機能は欲しい(PDFでも出来ているのだから)。
◆配信形態・サービス
それでは、今後の世界・日本の配信形態はどうなるかということを予想してみる。
(1)本
Amazon Kindle Store
コンテンツの多さ、元々が本屋という本のビジネスモデルを持っている点、まあ使えるフォーマットという面からここが世界でも日本でも中心になるだろう。いくつかの出版社は別のサービスのみみたいなことはあると思うけど。(音楽のソニーレーベルのように)
Kindleのハードは性能がとてもいいというわけではないので、ハードというよりはソフトの普及でこうなると思う。どこでもどんな機械でもKindleで買った本が読めるというウィスパーシンク機能のおかげで。
新Kindleが日本語表示できるということになっているのは、もう裏ではどこかの本を売る契約になっている証拠だと思う。個人がセッセと変換したものを読むために、めんどくさい日本語化するとは思えない。どこかの出版社と提携してというのがストーリーな気がする。あるいは取次かなあ。
(2)雑誌
上述のように、レイアウト重視のものは今のままだとKindle Storeだけでは難しい。
ビューワーでよくて、アーカイブができるサービス。
Google ブックス
今は限られたものしか見れないけど、雑誌のレイアウトが維持できて、ブラウザが入っていれば見れる。そして基本的には見開きで見れればいい、そして上に書いたhtml5が使えるのはブラウザ。こうなるとGoogle ブックスが来るのではないかと。
アプリで動きつけてビジュアル化も従来のものとは違い面白いのだけど、何しろ作るのに時間がかかるし、スキルが必要。雑誌を作る過程でそこまでの余裕はないのでは。
画像なので現状は検索できないのだけど、それはOCR使ってしまえばいい。最近Google DocにOCR機能がついたということもある。またしおりとかの付属機能もGoogleならできそうな気がする。現状のズーム機能って、雑誌の場合に有効になる気がする。アーカイブはもう言わずもがな。
Popular Scienceはこのような形で展開済み。
ということで、書籍はKindle、雑誌はGoogle ブックスというのが私の予想。
ちなみに漫画はeBookJapanがかなり成功しているのでアプリ形式でこのままな気が。
◆おまけ
日本の書籍ビジネスはどうなる?ということを考えてみると。
まず、音楽配信のように独自形式なサービスは次々と潰れるか、細々と生き残る。個人的には昔から電子書籍に取り組んできたボイジャーにはガンバッテ欲しい(今もけっこうコンテンツ揃えてるし)のだけど、ePubに対応しなければ難しいかなと。
それから、日本独自の取次は何らかの形で残りそうな気がする。何らかの形というのは電子書籍サービスに関係するということ。
面白い連携が今日発表された。「セブン&アイ、電子書籍に参入 掲載商品売れれば出版社に還元」
セブン&アイ・ホールディングスが取次ぎ大手のトーハンと組んで展開というもの。日本の書籍ビジネスの親分は取次なのでこれと組んだというのは非常に強い。また、コンビニはあちこちにあるので宣伝、またはいろんな商品との連携もできる。ジュース1本買ったら本1冊とか。(wikipediaによると鈴木さんはトーハン出身なのか)
取次の日販はeBookJapan、資本先としてパピレスをすでに展開しており、漫画では成功しているといっていいと思う。ただ漫画以外は?
そしてこの印刷会社が、電子書籍によって、一番被害を受けるところではないかなと思う。まあ紙が無くなるわけではないのだけど。
日本の印刷会社はけっこう昔から電子ペーパーの研究をしてきていたと思う。でもそれは中国や台湾に持っていかれてしまった。
リアル書店もHMVの撤退に見られるように厳しくなる。
さて、いよいよ日本でも電子書籍時代の到来で面白くなってきた。今年の後半にはスタートとも言われている。
ただ、音楽配信みたいに、数年はいくつかのサービスが残り 徐々に淘汰となっていくのではないかな。
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