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明日へのカルテ:第1部・医師不足解消の道/3 病院統合、渋る自治体

 ◇機能分担の成功例も

 診療予定表に「休診」の文字が並ぶ。宮城県白石市の公立刈田綜合病院(308床)は、07年度に36人いた医師が26人に激減。研修医の応募もなく、研修病院の指定を外された。病院幹部は「どうしたら医者が来てくれるのか」と頭を抱える。

 一方、隣接する大河原町のみやぎ県南中核病院(300床)は医師68人。両病院の経営統合も検討されたが、刈田病院側が難色を示し事実上、頓挫した。風間康静(こうじょう)・白石市長は「刈田病院は02年に移転・新築したばかりで、すぐ統合というわけにはいかない。住民の同意が必要だ」と話す。

 ただ、沼倉昭仁市議(民主)は「県南中核病院に吸収されるというイメージがあり、市長は自分が刈田病院をつぶしたと言われたくないのでは」とみる。統合を提案した伊藤恒敏・東北大教授は「刈田病院の医師不足は待ったなし。メンツにこだわっている場合ではない」と指摘する。

 両病院は1月策定の地域医療再生計画で、県南中核病院に救命救急センター、刈田病院にはリハビリテーション病棟を設けて連携することになった。だが、リハビリ病棟開設に必要な医師確保のめどは立っていない。

 隣接する自治体にそれぞれ中小規模の病院があり、医師不足に苦しむ例は少なくない。そんな中、統合が効果を上げた例もある。

 山形県酒田市。2キロしか離れていない県立日本海病院(現日本海総合病院)と市立酒田病院(現酒田医療センター)は08年4月、地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構として経営統合した。

 両病院は問題を抱えていた。酒田病院は老朽化で建て替えが必要だが、財政的な負担が大きく、日本海病院も累積債務が100億円超。二つの総合病院があるのに救命救急センターはなく、診療科が重複して双方とも医師1人の科があるなどいびつな構造だった。

 05年12月に市が県に統合を申し入れ、06年9月に合意。当時酒田病院長だった栗谷義樹・機構理事長は「経営統合を急ぎ、経営体制を早く発表することを意識した」と語る。他県の例で「『吸収される』と思われた病院から医者がいなくなる」と学んでいたからだ。

 統合1年目から多くの科は日本海総合病院に集約し、酒田医療センターは少数の科で診療。医療クラーク(秘書)や看護助手らを新たに約50人採用、医師を事務作業から解放した。手術や検査を多くこなせるようになり、入院患者の在院日数が短縮されてベッドの回転率も上昇。集約で看護体制も手厚くなり、診療報酬も大幅に増えた。

 経営は改善し、08年度決算では日本海総合病院は開院以来初の黒字となり、両病院合計で1億2200万円の黒字に。09年度も2億5500万円の黒字だ。

 日本海総合病院は今月にも増床工事を終え、酒田市など2市3町で初の救命救急センターを備えた646床の急性期医療を担う病院に、酒田医療センターは回復期を受け持つ114床の病院に、機能分担して生まれ変わる。

 栗谷理事長は「統合しても、医師を支えるインフラを作れなかったら、労働時間が増えて医師は辞めていったと思う」と振り返る。

毎日新聞 2010年8月4日 東京朝刊

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