「峰風」とともに
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602. バルブ・スプリング の 話
 現在のバイクのエンジンは殆どOHV(スーパースポーツはDOHC)です。

しかし、1960年代頃までバルブ・スプリングの性能が不十分でエンジンの回転は上げたくても
上げられませんでした。

エンジンの回転を上げる為にはピストンが猛烈な速さで上下し、バルブもそれに合わせて
開閉しなければなりませんが、スプリングの能力が低いとバルブがスプリングの力
戻り切らない内にピストンが上昇して来てバルブとスプリングが衝突してエンジンが壊れてしまうのです。

対策としてはスプリングを強い物に変える事でしたが、今度はエンジン回転の抵抗を増やす結果となり、
あまり良い対策ではありませんでした。

現在ではスプリングの材質も良くなり、この問題はほぼ解決していますが、
イタリアのDUCATI社は1956年に125ccGPレーサー用に有名なデスモドローミック機構を採用し、
バルブの閉じ側もカムで駆動する方法で根本的解決を成し遂げました。

 デスモドローミック機構


これを発明したのはモンディアル社からDUCATI社に引き抜かれたファビオ・タリオーニ技師です。

しかし、彼もいきなりデスモを採用した訳では有りませんでした。

 1954年に彼が設計した100ccのベベルギア駆動 OHCシングル レーサー マリアンナ
スプリングを用いるOHCエンジンでした。

 マリアンナ 100cc シングル・レーサー (1954)

しかし、天才、タリオーニはスプリングに普通のコイル・スプリングは使いませんでした。


彼はヘヤピン・スプリングを採用したのです。

デスモを採用していないモデルは1970年代に入ってもこれを使い続けたそうです。
彼は卒論でデスモを構想していましたが、いきなりそれに取り掛からず、まず、今までのスプリング方式の
改良
から始めたのです。


そしてデスモドローミックになってもこのヘアピンスプリングは装着され続けました。
バルブ全閉時の気密性確保のためです。
目的が違うので極弱い物で良かったのでデスモやエンジンの作動の妨げにはなりませんでした。

技術地道な積み重ねによって発展すると言う良い見本です。



by SS992 | 2010-07-24 21:41 | メカ談義 | Trackback | Comments(9)
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Commented by d675 at 2010-07-25 01:45 x
こんばんは!峰風さん
とても興味深く拝見しました!!

デスモドローミック機構や、そこに至るまでのお話、
大変分かりやすかったです
タリオーニ氏が卒論でデスモを構想…という行にも驚きましたが、何より特筆すべき点といたしまして、
今までの方式を再考した上でヘアピンスプリングを用い、それをデスモになっても活かし続けられているという点ですね!(図までありがとうございます 大変助かりました!)
いきなりデスモ着手でしたら、また違った事になっていたかもしれませんね(?)

ここに氏が、辿り着くまでの道のりを考えますと、
やはり日々の試行錯誤がどれだけ必要なのか、重要なのか、
考えさせられますし、
そういった諸々の結晶が技術に結びついてゆくのですから、
(2輪に限ったことではありませんが)
本当に、
頭が下がる思いでいっぱいです
Commented by d675 at 2010-07-25 01:49 x
【追伸】
…いまは亡き祖父ですが、
その昔、航空機エンジンの仕事に就いていたそうです
それを知ったのは祖父が亡くなった後でしたので、
当時の様子が聞けずとても悔やまれましたが、
それでも…
じいちゃんも仕事場で毎日闘っていたのだなぁと思うと、
とても誇らしいです

…ちょっと、祖父を思い出したのですよ

長文失礼しますね
おやすみなさい(^^)
Commented by 峰風(SS992) at 2010-07-25 05:54 x
 今回は地味な話しなので読んでいただけるか、心配だったのですが、
御理解戴き嬉しいです。
また、お祖父様が航空機エンジンの仕事についていらしたとの事、
確かにお話しを聞ければ有益だった事でしょう。
残念です。 こうしたチョッとしたきっかけで技術は伝承されて
いくのだと思います。
Commented by d675 at 2010-07-27 01:03 x
峰風さん、嬉しかったことがありましたのでコメントします☆
(今回の記事からそれますので恐縮ですが)

今日、DUCATIのビデオを見たんです!

そうです、嬉しかったことは、
普段、峰風さんのブログを拝見していましたので内容がとても理解しやすかったことです

今までの自分でしたら、言葉を受け止めることはできましても、
理解に繋げることは容易ではなかったでしょう
峰風さんのブログでいつの間にか、DUCATIへの理解が想像以上に深まっていたのです!!!
分かると、本当に、楽しいですね(^^)

また峰風さんが以前、書かれていらっしゃった
テルブランチ氏のお話が聞けたことは、とても貴重でした
この方が峰風さんのバイクをデザインされたのですね!

また、DUCATI社の気質みたいなものも伝わってきまして、
バイク=人生⇒"攻め" 
のような捉え方にとても感銘をうけました!

もぅ長文ゴメンなさい!
嬉しくて、本当はお伝えしたいこといっぱいあります(笑)
今夜の夢は、きっとイモラさんと峠を攻める夢かもしれませんね…!
…夢の中なら自由ですから(笑)

おやすみなさい…!
Commented by 峰風(SS992) at 2010-07-27 05:35 x
 ライダーズ・クラブビデオ「DUCATI Ⅲ」ですね?
私はⅠ、Ⅱは持っていますがⅢは持っていません。
そうですか、Ⅲにはピエール・テルブランチ氏のコメントが
載っているのですか、私のつたないブログが理解の助けに
なったとは光栄です。
 イモラ・レプリカに乗られるのが夢でいらっしゃる様に
拝見しましたが、意外と早くチャンスは訪れるかもしれません。
(私もそうでした。ドカに乗るのは夢のまた夢だと思っていました。)
まずは大型二輪免許を取得してチャンスを待って下さい。
Commented by 亜矢 at 2010-07-27 20:38 x
興味深い記事です。
>地道な積み重ねによって発展する
のくだり、同感です。
ひとっ飛びには何事も、なし得ないのですよね。
最近、趣味の弓道などであれこれ悩むことが多いのですが、この記事を読んで不思議と勇気づけられました。

千里の道も一歩から。
焦らずコツコツ積み重ねることって大切ですね。

Commented by 峰風(SS992) at 2010-07-27 22:27 x
 私のつたない記事がお役に立てば幸いです。

スランプ?を脱出出来る様に祈っています。

追伸 開きに成っている にあ様 に宜しく!
Commented by d675 at 2010-07-28 01:19 x
こんばんは!

ビデオは、家族が録画したものでした(笑)
ライダーズクラブから出てるんですかぁ~~(ヤッタぁ!)
保存版になりますね~~!!

映像ですとエンジン音がそれとなく聞けることはいいですね
まぁ実際に聞くのが1番ですが…

1馬力上げるための、そこに潜む闘い―

作り手の情熱が込められているバイク、
製作風景を知ると益々、愛おしくなります
作り手とユーザーとの双方の情熱で成り立っている世界ですね
そういう土壌を再認識させられたことは、とても有意義なことでした

峰風さん、いつもありがとうございます
まわりにDUCATI乗っていらっしゃる方は皆無なので、
本当、貴重な交流なのです
DUCATIクラスですと、やはり大人の、熟練の方がお似合いです
そのバイクに見合ったライディングテクを含めまして(パワーの引き出し等)、1つの完成された姿なのかもしれません


若造は修行せねば(笑)

では、おやすみなさい
連日、バイク番組ばっかり見ていて寝不足気味という
修行僧ですからね(笑)
Commented by 峰風(SS992) at 2010-07-28 07:33 x
ビデオはご家族が録画されたものとの事。
ライダーズ・クラブ版とは内容が異なる可能性が高いので
内容を確かめてからご購入される事をお奨めします。
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