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2003年5月9日。
太陽系誕生の秘密を探る往復数十億kmも及ぶ壮大な旅に向けて、小惑星探査機が地球から旅立った。
探査機の名前は「はやぶさ」。
宇宙航空研究開発機構・JAXAの指導のもと、
システムインテグレイターとしてNECが開発から担当。
数々の成果を残した旅は、先進の技術と、人と機械のチームワークが成し遂げた奇跡の旅だったのです。
はやぶさが目指したのは、地球と火星の軌道の間に位置する小惑星「イトカワ」。その軌道に乗せるために、JAXAの技術者と長年培ってきた地球スウィングバイという航法が採用された。
(小湊氏)
「今までのやり方と大きく違うのは、普通は最初にでっかいドーンという噴射をしますが、はやぶさの場合は、イオンエンジンと地球スウィングバイというのを組み合わせる噴き方を世界で初めて取り入れました。
まず最初は地球とほぼ同じ軌道でぐるりと一年間一周します。この間にイオンエンジンは噴き続けます。再び地球に近づいてきたときに、スウィングバイによって地球のエネルギーをほんの少しだけもらいます。そうすると速度が4km/s加速されてこの加速によってイトカワの軌道に飛んでいくと。このようなやり方をしました。
はやぶさの地球スイングバイは非常に厳しい精度要求がありました。再接近時の高度が3700km、位置の誤差は1km以下、速度の誤差は1cm/s以下と、このような精度が求められました。はやぶさはこのような細い回廊を通り抜けることに成功しました。
NASAの軌道担当の方から連絡がありまして、メールで、Congratulation、でその後、Outstanding Job、突出した成果だねとメールに書いてありました。嬉しかったですね。NASAからそういうメールをもらったというのはやったという思いがありましたね。」
こうしてはやぶさは、小惑星イトカワへと軌道を変えた。
重力がほとんどないイトカワには留まることができない。
はやぶさにはタッチダウンという方式でサンプルを採取するミッションが与えられた。
(萩野氏)
「ちょうど地球から見ると太陽の裏側にイトカワがありまして、だいたい太陽までの距離の2倍遠いところにあったんですね。結局30分に1回、1時間に1回しか制御ができないわけですね。それではとてもタッチダウンはできないわけです。それで小惑星の表面に近づいたところから先は、はやぶさで自分で下の地形を見て、どっちに傾いているか、自転でどっちに流れているか判断しながら自分で考えてやるしかなかった。」
レーザー高度計、ターゲットマーカーやそれを確実に捉えるカメラ技術。様々な新しい工夫や技術が、タッチダウンを成功させた。
タッチダウンに成功し、離陸したはやぶさを待っていたのは、化学エンジンからの燃料漏洩による姿勢の喪失、交信が途絶えるという最悪の事態だった。
「信じよう。はやぶさはきっと答えてくれるはずだ。」地球からの呼びかけが続いた。
交信が途絶えてから7週間。
(ビーコン音)
(萩野氏)
「どこかの季節になれば、太陽電池に太陽があたる季節がやってきて、そこでコマンドが届けばはやぶさから通信が帰ってくると信じてました。ついついその時には嬉しいというよりも、次はどうやって立ち直らせていくのか考えなきゃというふうに思いました。」
この時すでに、燃料を失った化学エンジンは使えず、イオンエンジンや太陽の光の力を利用することで、はやぶさの帰還は始まった。
(白川氏)
「その時点で、姿勢制御装置の殆どは失った状態で帰ってきてますので、使えるものといったらイオンエンジンについてる中和機で微弱な力を出すぐらいしかなくて、とにかくそれを使って姿勢を立て直して姿勢を維持するというのをしばらく続けてました。
非常に小さな力、太陽輻射の力ですとか、少しづつ姿勢を変えられる力ですとかを使って、右に傾けたいと思って、結果がわかるのは次の日ですので、また次の日見に行って、昨日やったとおりにいってるかどうか見て、そのとおりになっていなければまた反対側の修正を入れる、そういうことを続けてきてます。
はやぶさっていう炎を絶やさないように番をする番人、そういう気持ちになることがたまにあります。」
7年間に及ぶ壮大な旅を終え、地球に戻り、その使命を終えたはやぶさ。
そのプロジェクトをNECは、イオンエンジンをはじめ、様々な機器の開発、軌道計算、宇宙を航行するオペレーションなど、トータルにサポート。数々の試練を乗り越えて得られたノウハウは、宇宙開発の次のステップへの大きな財産となりました。
『はやぶさ』への想いは、いまも飛び続けています。
未来へと続く一筋の道となって。