きょうの社説 2010年8月4日

◎金沢の小学校統合 子ども本位で議論深めたい
 金沢市立小中学校の規模適正化に関する懇話会が、9小学校の統合を検討する提言をま とめた。学校の統合はかつては山間部の課題だったが、金沢では市街地で1学年1学級や全学年で12学級未満の小学校が増え、少子化と都市のドーナツ化現象は学校規模の変化に鮮明に表れている。今回の統合対象も、6校が犀川、浅野川近辺の市街地にある。

 金沢では、小学校の通学範囲である「校下」を基本に地域団体が組織化されている。学 校がなくなれば住民の活動に影響し、精神的な喪失感も大きいだろう。だが、学校規模を考えるうえで大事なのは、子どもたちの学習の場としての機能を高めるという視点である。今後も小規模化が進むのであれば、それが地域で子どもを育てるうえで望ましいのかという点から検討する必要がある。地域で問題意識を共有し、子ども本位で議論を深めていきたい。

 提言では、小中学校とも全学年でクラス替えが可能になる12―24学級が適正規模と した。統合対象は、新竪町、馬場、大野町、材木町、野町、味噌蔵町、菊川町小と、中山間地の朝日、俵小である。12学級未満は他にもあるが、中山間地を除く7校は、通学区域や周辺校との距離から統合しても児童の負担が比較的小さいとされた。

 今回の提言は統合相手や時期に踏み込まず、市はこれから地元関係者に内容を説明する 。対象校には明治からの歴史をもつ学校もあり、地域からさまざまな意見が出るだろう。

 小さな学校も1人1人にきめ細かく対応できる良さはあるが、各学年複数学級であれば 、子どもたちが集団の中で切磋琢磨し、クラブ活動なども活性化する。教員も多くいれば組織的な配置ができる利点がある。一定規模を確保することの重要性は教育行政の中では認識されているが、住民側の理解は必ずしも十分とは言えない面がある。小規模校の課題が実感されていなければ、保護者の間から通学距離が長くなるという反対意見が相次ぐかもしれない。

 学校統合はデリケートな問題だが、腫れ物に触るような扱いでは議論は進まない。市は 教育的な視点から説明を尽くす必要がある。

◎中小企業応援センター 金融機関同士の連携も鍵
 中小企業の新事業展開などを後押しする「中小企業応援センター」が4月に開設されて から4カ月が経過した。石川、富山両県内の応援センターには開設3カ月で延べ1千件以上の相談があり、中小企業診断士ら専門家派遣などを通じた経営支援が行われているが、応援センターが成果を挙げ得るかどうかの一つの鍵は、センターを構成する地域金融機関同士の連携にある。

 経済産業省が全国で採択した中小企業応援センターは、地域で中小企業の経営支援に取 り組む団体や金融機関などを補完・強化する後方支援機関に位置づけられる。石川、富山県には二つのセンターがそれぞれ設置されたが、そのうちの一つは金融機関が中心になっている。石川は北國銀行が核となり5信用金庫を通じた相談も受ける体制、富山は北陸銀行と富山第一銀行で構成されている。

 地域金融機関は、普段は融資先の開拓や預金獲得などをめぐって激しい競争関係にある が、地域経済のパイの奪い合いばかりではなく、お互いに協調して新たなビジネスを育て、パイを拡大していくという発想も重要である。金融機関同士が連携して地域経済全体の底上げを図ることが、応援センター設置の意義といえる。

 応援センターは、経産省が全国327カ所に設置した「地域力連携拠点」を集約し、衣 替えしたものであり、異業種連携による新事業創出や農商工連携、地域資源を活用した起業などをバックアップする。取引金融機関の異なる企業が連携して新事業を始めるとなれば、金融機関もおのずと呼吸を合わせなければなるまい。

 昨年末施行の中小企業等金融円滑化法は、地域金融機関同士が連携して金融支援を行う ことを努力義務としている。同法の趣旨からしても、地銀同士や地銀と信金などが連携して地域経済をけん引する取り組みは重要である。

 最近は合同商談会などが積極的に開催されているが、今後、介護なども含めた成長分野 の新しい担い手を支えるため、共同で支援スキームを開発するといったことも考えられよう。