きょうのコラム「時鐘」 2010年8月4日

 千秋楽の悔し涙が報われたことになる。快挙を達成した横綱白鵬に、天皇陛下がお祝いと励ましの書簡を届けられた。異例のご配慮だという

3場所連続全勝優勝は史上初である。47連勝という歴代3位の記録も達成した。が、野球賭博問題で、取組は生中継されなかったし、天皇賜杯授与も自粛された。無念の涙を流した横綱に、陛下は心を寄せられた

白鵬が抜いた横綱大鵬の連勝記録は、「誤審」で止まったとされている。土俵際の微妙な攻防が黒星と判定された。周囲は同情したが、大鵬は「横綱が物言いのつく相撲をとってはだめだ」と自分を責めた。そんな横綱の姿を、白鵬は手本にする

土俵の外の騒ぎに目を奪われて、相撲ファンは孤軍奮闘する横綱の志をどれだけ知ろうとしたのだろうか。陛下のご書簡は、そんなことも問い掛ける。場所前も場所中も、親方や力士が謝罪した。が、涙を流して出直しを誓った人は、何人いたのだろうか

不祥事のたび、深々と頭を下げる光景を見慣れて久しい。空々しい陳謝に鼻白むことも増えた。だからこそ、本物の悔し涙にまで、鈍感ではいたくない。