パレスチナのガザ地区に人道支援物資を運ぼうとした市民団体の船がイスラエル軍にだ捕され、活動家9人が死亡した事件について、国連のパン・ギムン事務総長は、事件の真相を究明するための調査委員会を設置すると発表しました。
この事件は、ことし5月、パレスチナのガザ地区に人道支援物資を運ぼうとしていたトルコの市民団体の船をイスラエル軍がだ捕し、軍の兵士の発砲で活動家9人が死亡したものです。この事件をめぐって、イスラエル、トルコ双方と協議を続けてきた国連のパン・ギムン事務総長は、2日、事件の真相を究明するための調査委員会を設置すると発表しました。調査委員会は4人で構成され、議長はニュージーランドのパーマー元首相が、副議長は南米コロンビアのウリベ大統領が務めます。また、イスラエルとトルコからそれぞれ代表が1人ずつ加わります。調査委員会は、10日から作業を開始し、9月中旬までに最初の報告書を取りまとめるということです。この事件をめぐっては、先月、イスラエル軍が、船に突入した特殊部隊の対応は適切だったと兵士らの対応を評価する内部調査の結果を発表したことに対して、トルコなどから反発が強まっています。こうしたなかで、国連が設置する調査委員会が、イスラエル軍の兵士から直接事情を聞くことができるかどうかなど、どこまで踏み込んだ調査を行えるのかが注目されます。国連が調査委員会の設置を決めたことを受けて、イスラエル政府は2日に閣議を開き、この調査に協力することを決めました。閣議のあと、ネタニヤフ首相は「隠すところはない」と述べ、だ捕の際に軍の発砲でトルコ人活動家9人が死亡したことについても、正当な武力行使だったとする立場を強調しました。イスラエル政府は、去年、パレスチナのガザ地区に対する大規模攻撃について、戦争犯罪の疑いがあるとした国連の現地調査に対しては協力を拒否するなど、これまで国連による調査に否定的でした。今回、協力姿勢に転じた背景には、事件後にトルコ政府がイスラエルに対し国際調査の受け入れを強く求めてきたことから、これをトルコとの関係修復の糸口としたいという思惑もあるものとみられています。