2009-12-23
タックスヘイブンから学ぶ献金、寄付のススメ
タックスヘイブンの歴史は古いです。もともとはカリブ海や南太平洋の小さな島国などが、観光以外の産業がなかなか成り立たないために、外国企業を誘致するために、優遇税制を導入したのがタックスヘイブンの始まりです。税金のかからない国や地域は、一部の人たちにとっては、タックスヘイブンはとても重要な意味を持っています。個人投資家などが、日本で株式の売買をして得た収入、配当金で得た収入などには税金がかかりますが、タックスヘイブンに会社を作り、その会社名義で株式の売買をしていればそれらの税金はかかりません。
また、会社がタックスヘイブンに子会社を作り、自社グループの利益をタックスヘイブンの子会社に集中させればほとんど税金を払わなくて済みます。しかし最近は日本の税務当局も、このタックスヘイブンをただ指をくわえて見ているわけではありません。日本の国税通則には「タックスヘイブン税制」というものがあります。
日本の会社もしくは日本人が50%以上の株を持っている場合は、いくらタックスヘイブンにある会社であろうが、税務上、日本の会社として扱い、日本の税金をかけるというものです。ただ、タックスヘイブンの中には、プライバシーの保護を売り物としている地域もあります。そこでは、会社の情報を一切取得することができず、課税を断念するケースも現実多いそうです。
また、タックスヘイブン税制にひっかかるのは、実態のないペーパーカンパニーだけであり、タックスヘイブンにしっかりと事務所があって、事業が行われていれば適用されることはありません。そのために、現地に会社としての実態を作って、合法的に堂々と租税回避行為を行う日本の個人投資家や会社もあります。キャピタルゲインや配当金が無税というだけでも、実質利回りが格段に上昇しますから当然です。
また、海外に1年以上居住している人は、日本人であっても「日本の非居住者」扱いになり、日本での所得税などがかかりません。その制度を利用して、海外に1年以上いるように見せかけ、非居住者に成りすまし、税金を逃れる方法もあります。これも頭のいい投資家などがよく使う手です。
国際的に有害な税制、透明性の欠如、および効果的な情報交換に非協力的という事実が金融危機を引き起こしたといえなくもありません。しかし、国境を越えて活動する金融機関などに対する監督や租税回避地対策の強化、銀行経営者らの報酬制限等には多くの外交上の問題も絡んでいますのでかなり複雑です。
どの会社だって、どの個人だって、税金を払わずにすむならそれに越したことはないと思うのは当然です。税金逃れをしていることでだれが損をしているかといえば、実はあまりはっきりしないというのが正解だと思います。国としては、高額納税者や優良企業に逃げられれば税収が減っていますので損はしています。
節税分は、ある程度は個人や法人を潤わせていることと思います。しかし、その一方で消費は進み、あらたなサービスやモノを提供することに繋がります。つまり、その恩恵をこうむっているのは、実は世界の消費者だったりするのも事実だと思います。
自分自身で使った方がよりよく社会に貢献できるなら国を介する必要は無い。
税というポジションは国が社会に還元するか、個人や一企業が社会に還元するかの鬩ぎ合いにあると思います。いずれにせよ資産を意図的に使えるようにする行為は批判されるモノなのでしょうか。
脱税がいつまでも続くのは国の税の使い方に納得できない個人や企業の静かな反逆なのかもしれません。もっと献金や寄付に対して国や国民がオープンで寛容になれば、個々人にとって望ましい社会が形成されていくのだと思います。
参考文献
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
- 作者: 橘玲
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