2009-09-22
限界を迎える世代間の再配分システム
国及び地方の長期債務残高は、すでに800兆円を超え、しかもその拡大ペースを速めています。日本の財政は、刻々と持続不可能な水準に近付いています。このような状況でも出される提案は折衷案ばかりで組み合わせやバランスを考えた配合率の不毛なお話ばかりです。やるべきことはリターンの見込みのある分野にしか投資しない、または大幅な行政サービスカットのどちらかしかありません。
『いらないものはいらない』
問題は「誰が借金を返すのか」ということに関して、国民一人一人が不平等であることです。現在の高齢世代は“バラマキ”の恩恵に浴する一方、借金返済の負担の多くを自身の寿命によって免れます。借金苦の負担にあえぐことになるのは、現在の若年世代およびこれから生まれる子供たちです。
若年世代は人口も少ないので一人当たりの実質的な債務負担額は、650万円からさらに拡大します。これから生まれてくる子供たちは、生まれながらにして1000万円近い借金を背負うことになると予測されています。『バラマキ』は、現在の高齢世代や現役世代が恩恵を受けます。医療費、年金、介護を維持するために大きな借金をしていかねばなりません。このツケは若年世代に回されます。キツイ言葉でいえば『バラマキ』は若年世代からの『搾取』です。
現在の高齢者は右肩上がりの経済環境の中を生きてきました。軽い社会保障負担のもとで貯蓄を増やすことができました。一方、現在の若年世代は右肩下がりの経済環境を生きています。重い社会保障負担のもとで、前世代の借金を返済しながら老後資金を貯めざるを得ない状況にあるのです。
このように状況であるにもかかわらず、現在の若年世代はなぜか抗議をしません。政治的無関心といってしまえばそれまでですが、実は若年世代は静かに抵抗運動を行っています。『草食系』や『おゆとりさま』のような行動がそれを物語っています。
現代の若年世代は国の未来を信じていません。将来の所得増を信じられないので、結婚や出産に対しても慎重です。出生率が低下し、深刻な少子化に歯止めがかかりません。年金制度の持続性を信じていませんので年金の納付率低下となって、年金制度の根幹を脅かしています。消費に踊らず、政府が推し進めようとしている内需拡大には殆ど貢献していません。新たな消費ムーブメントをつくりだすこともありません。
若年世代の不活性化はあらゆるところに影響を及ぼしています。若年層の存在感は希薄化し、あらゆる組織で高齢化が進んでいます。保守的な高齢世代から若年世代がイニシアティブを取らなければ、新しいイノベーションは生まれにくい。革新的商品やサービスが生み出されることがなく停滞感、後退感に満ち溢れています。
年長者が既得権を持つ『老人国家の再配分システム』では、未来を切り開くことはできません。生まれる前から子供たちを借金漬けにしてよしとする世代など信用されるはずがありません。この国は、今を生きるために子供たちを金づるにした政策しか打ち出せない国に成り下がっています。
若年世代たちは子をなさぬことで、犠牲者を減らしていると言えなくもありません。一旦年金制度など解散し、いままで積み立てた配当金を全て配る。不足するならごめんなさいの一言で全員で公平に割り引く。その配当金を前にして改めてどうしたいのかを考えればいいのです。不平不満を言っていても原資が足りないのですから何をやっても不公平が出るのは当然なのです。
世代間搾取が終わせる気が無いのならば、誰からも参られることのない立派な墓でゆっくり休むことになるでしょう。孫達に壊されないように頑丈な墓がオススメします。でも本当は、誰もそんなこと誰も望んでいないはずです。世代間がお互いに思いやり、公私の分別をつけ継続性がある国にしていくことは誰もが望んでいることだと思います。
他人任せの揚げ足取り
現在の停滞感やひっ迫感は考えることを他人に任せ、国に養ってもらうことを主張しつづけてきた結果です。『知らない関係ないという無責任』はそれだけで『未来への罪』です。私達の未来は私達自身が考えていかなければなりません。
参考文献
- 作者: 井堀利宏
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/07
- メディア: 単行本
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参考記事
アゴラ : 団塊の世代は逃げ切れるか - 池田信夫 <ahref="http://b.hatena.ne.jp/entry/agora-web.jp/archives/896385.html">