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母性都市

2010年8月3日0時4分

 都市がまた暑い夏を迎えている。都市環境を支える高層ビルが、巨大な壁となって、海からの風を遮り、異常な高温度環境を作り上げる。それだけではない。ビルのエアコンから排出される熱が、都市の暑さに拍車をかける。地球温暖化に加え、いくつかの要素が重なり、日本の都市は、熱帯都市へと突き進んでいる。

 10年前に、博報堂生活研究所の女性研究員が都市計画リポートをまとめた。タイトルは「母性都市」。そこに生きる人たちに優しい、母性に抱かれるような都市を目指した。例えば、その都市の道路は、コンクリートで地面を覆い隠すような道路とは違う。すべて、れんが造りである。れんがのすき間から植物が顔を出す。地球が呼吸していることを、都市の住人に実感させたいからだ。地球が呼吸していることが、住む人にも安堵(あんど)感を与える。

 この都市には自然を体感してもらう工夫がちりばめられている。街を通り抜ける風を風車や風船などの簡単な仕掛けで視覚化する。自然を五感で体感させ、五感ごと癒やす。いろいろなサイズのベンチがたくさん置かれているのもこの都市の特徴だ。ファミリー用、カップル用、1人用サイズのベンチ。様々な人が、ベンチに腰を下ろし、ゆっくりと都市の時間を過ごす。そして、母性都市の最大の特徴が、都市の各所に見られる「幹の太い大きな木」。ビルで作られた陰とは違う優しい陰の下で住民たちが憩う。心から癒やされる。

 当時、男性の研究員には考えられないと評判になった女性研究員による着想は、効率や、マーケティングを優先した都市構想のなかで、今でも新鮮だ。男性とは違う発想、感性が求められる時代である。(深呼吸)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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