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ニュース裏おもて:広がる地域生活定着支援センター 出所者を支え再犯防止を /熊本

 ◇県も事業候補者選定

 刑務所や少年院などを出た障害者や高齢者の社会復帰をどう進めていくのか。彼らを支援する「地域生活定着支援センター」の設置が全国で進んでいる。出所後の生活環境を整え、再犯防止につなげる狙いがある。県も6月、公募で施設運営の委託候補者を選んだ。支援活動の裏表を取材した。【遠山和宏】

 ■「刑務所を出たらどうなるのか」

 長崎県雲仙市にある更生保護施設。「刑務所に戻らないようにしようなんて、考えたことがなかったんですよ」。車椅子に乗った79歳の男性が過去を語り始めた。16歳の時、仲間との倉庫荒らしで刑務所へ。刑務所内でも傷害や脱走などの事件を起こした。出所後は暴力団に入り、前科16犯。今年5月に熊本刑務所を出るまで、79年の人生の通算約55年は「塀の中」だった。

 出所後の不安に襲われたのは、病気で歩けなくなった5年前だ。自己の経歴から介護施設への入所は難しいと考えていた。昨年1月に長崎県に全国初の生活定着支援センターを開いた社会福祉法人・南高愛隣会から、更生保護施設「雲仙・虹」を昨年末に紹介された。7、8回の面接を経て入所した。

 まず職員の温かい応対に心を打たれた。「こんなに優しくしてもらったことはない。行き場をなくし、また馬鹿なことをして刑務所へ戻ろうとしたかもしれない。歩けるようになったらボランティアをして恩返しをしたい」と声を震わせた。

 ■県内の設置の動きは--

 南高愛隣会は昨年9月、熊本市内に熊本地域生活定着支援センター準備室を置いた。県は公募の結果、同会を事業の候補者に選んだ。県と正式な契約を結べば、身元引受人がいない高齢者や障害者の出所予定者に関する情報を刑務所などから事前に聞き、介護施設などにあっせんできる。

 刑務所に長くいると住民票の再交付が必要になり、再交付までは生活保護も受けられない。出所者に拒否反応を示す福祉施設も多い。しかし「一時的にせよ住居を確保して職を探したり、福祉サービスを受けるきっかけが作れる」と、準備室の峯友信介所長はセンターの意義を語る。

 法務省の調べでは、知的障害が疑われる知能指数69以下の新規受刑者は、毎年全体の2割強を占める。その一方で知的障害者(疑いも含む)の受刑者のうち、福祉サービスが受けられる「療育手帳」の所持者は1割にも満たない。センターは障害者手帳や、生活保護、要介護認定などの申請手続きをして、出所者を支援する。

 ■出所者を放置すれば再犯は減らない

 再犯の問題も深刻だ。出所後1年未満での再犯は、知的障害者で約7割、高齢者で約5割にも上る。満期出所者で帰住先が未定の人は、知的障害者で約4割、高齢者では約5割を占める。再犯者の7割以上は無職だった。彼らへの生活支援は不可欠といえる。

 センターは国の呼びかけで昨年から設置が始まった。社会福祉法人などに委託して年度内には全国約40カ所で発足する見込みだ。

 峯友所長は「出所した高齢者や障害者への支援はこれまで見過ごされてきた。彼らはモンスターではなく、社会的な弱者の側面がある。手を差しのべないと再犯へと走りかねない。社会全体のためにも必要な支援を提供したい」と話している。

毎日新聞 2010年8月2日 地方版

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