【パリ=国末憲人】フランスのサルコジ大統領は7月30日、帰化した後に重大な罪を犯した移民の仏国籍を取り消す方針を打ち出した。ただ国籍剥奪(はくだつ)は、戦中の親ナチス・ドイツ政権がユダヤ人排斥のために利用し、戦後はタブー視された措置。「移民差別を助長する」と、野党や人権団体は猛反発している。
大統領への支持率は、最近の改革の失敗や側近のスキャンダルで低迷。新方針は、右翼支持層の関心を引き戻し、2012年の大統領選で再選を目指すのが狙いだと受け止められている。
大統領はこの日、訪問先の仏南東部グルノーブルで演説。当地では7月、強盗団と警官隊との銃撃戦で強盗側の青年(27)が死亡。これを機に、青年の出身地にあたる郊外の移民街で暴動が起き、治安回復が課題となっていた。大統領はその対策として「外国出身者が警察官や憲兵隊員、公権力を委託された人物の命をあえて奪った場合、仏国籍は剥奪される」との方針を表明した。
オルトフー移民相は31日、国籍剥奪のための法案を9月に議会に提出する方針を確認。「重婚や女性器切除(女子割礼)の実施、重大犯罪にかかわった場合にも、国籍は失効させなければならない」と述べた。
ただ、この新方針は、等しく権利を持つと見なされてきた仏国籍保有者を、移民出身者とそうでない者に分けることにつながる。また、国籍剥奪は第2次大戦中、対独協力政権(ビシー政権)がユダヤ人に対してとった措置であることから、戦後の歴代政権は手をつけなかった政策だ。リベラシオン紙は「仏の過去で最も恥ずべき対応に立ち返るものだ」と厳しく批判。ルモンド紙も「サルコジ氏はタブーを破った」と論評した。