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きょうの社説 2010年8月3日
◎ルビーロマン3年目 「全国区」へ足掛かりの年に
市場化3年目の石川県産高級ブドウ「ルビーロマン」の出荷が始まり、初競りの一房の
最高値は20万円で前年並みの大台に届いた。今季からの首都圏への出荷は、多様な品種のブドウと競うブランド化への試金石となろう。ルビーロマンは鮮やかなルビー色と国内最大級の粒の大きさで市場の注目度は高く、石 川の味覚の顔になりえる。昨年は天候不順などで目標を下回る出荷となったが、今季は昨年の約2倍の出荷量を見込んでいる。安定生産に万全を期し、東京でのPR活動やマーケティング調査などの新たな取り組みの成果を上げて、全国ブランドの足掛かりとなる年にしてほしい。 首都圏では、高級イメージの浸透へ高級果物店での販売、PR活動などを展開する。ル ビーロマンの知名度を全国的に広める格好の機会であるが、業者や消費者の反応、流通での問題点などを十分検証して、高級イメージの定着と価格の維持に向けて今後の販売戦略に反映させる必要がある。 今季は収穫適期を迎えるブドウが大幅に増え、本格的な流通態勢が整ってきた。ただ、 昨年は天候不良とともに、果実が裂ける「裂果」の発生が課題となっているだけに、出荷のピークに向けて品質の維持と商品化率の向上がブランド化への関門といえる。県農業総合研究センターが栽培マニュアルの普及を進めているが、これまでの研究成果をもとにきめの細かい指導、アドバイスが求められる。今年、新たに設けられた出荷規格の「Gマーク」はルビーロマンの魅力である粒の大きさをアピールするもので、最高等級の「プレミアム」と「Gマーク」がより多く出回ることを期待したい。 ブランド化には地元の盛り上がりが欠かせない。生産者と県民との交流会や販売イベン トの開催など、1人でも多くの県民にルビーロマンを味わってもらう工夫を重ねてもらいたい。規格外品を使った菓子などの加工品の開発も進んでおり、有効活用とともに高級イメージを保ちながら、ルビーロマンの名を広める製品づくりを進めてほしい。
◎日銀の金融政策 デフレ脱却へ努力不足
菅直人首相が衆院予算委員会で、デフレからの脱却に向けて、あらためて意欲を示した
。同時に、日銀に対して「協調」を呼び掛けたのは、デフレ脱却が日銀と政府・与党の共通目標になっているにもかかわらず、日銀の反応が鈍く、危機感が伝わってこないからだろう。世界各国の中央銀行は国債やCP(コマーシャルペーパー)の買い入れを通じて、通貨 の大量供給に踏み切っている。信用不安の解消と景気刺激のためだが、日銀は貨幣供給量をほとんど増やしておらず、貨幣の流通量はあくまで市場に任せるつもりのようだ。これでは、デフレ脱却への努力が足りないと言われても仕方ない。 日銀の独立性が尊重されるのは、政治の思惑に振り回されると、市場の信頼性が揺らぎ かねないからである。だが、政府と通貨当局が政策目標についてすり合わせをするのは当然であり、白川方明日銀総裁は昨年11月の講演で「持続的な物価下落という意味において緩やかなデフレ状況にある」と述べ、政府と同じ認識を示した。それにもかかわらず、日銀が有効な手を打っているとは言い難い。 2000年8月、当時の速水優日銀総裁は「デフレ懸念の払しょくが展望できる」とし て政府の反対をはねのけてゼロ金利政策の解除を決定した。このとき、政治圧力をはねのける英断などと言われたが、結果として景気悪化を招いた。またぞろ「デフレ脱却には失敗したが、日銀の独立性は守られた」の繰り返しでは困る。 民主党の有志議員による「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」は、政府が2 −3%の間で消費者物価指数(CPI)の上昇率目標を設定し、日銀が目標の上下1%以内に維持するインフレ目標を導入するよう求めている。菅首相は、この提言に対して「基本的に共通の考えだ」と述べており、日銀への圧力はますます増していくだろう。日銀法を改正しインフレ目標を導入する案は、みんなの党も強く主張している。デフレ脱却に向けて、インフレ目標の導入を真剣に論議する時期が来ているのではないか。
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