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天声人語

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2010年7月31日(土)付

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 おとといの民主党両院議員総会の有り様に、この党を見限った人もおられよう。政治の暗雲低い中、お天道様だけが無遠慮なほど元気だ。列島が陽(ひ)に灼(や)かれ、雨に叩(たた)かれた7月の言葉から▼甲子園をめざす球音が各地でこだました。かつて栄光を刻んだ野球評論家の桑田真澄さん(42)が球児らに、「ミスをなくそうとムダな努力をするよりも、ミスから学ぶことのできる選手の方が成長が早い」。皆でミスをカバーし合うのも喜びであり充実だ。政治屋サンにはそれもないが▼開発や発展を問い続けるフランスの経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュさん(70)が来日した。「私が成長に反対するのは、いくら経済が成長しても人々を幸せにしないからだ。成長のための成長が目的化され、無駄な消費が強いられている」。つましくも幸福な社会を目指すべきだ、と▼古い民家の再生や保存が広まっている。「古民家鑑定士」という資格をつくった松山市の井上幸一さん(48)は「木は70年かけて育つ。家が30年でまるごとゴミになったのでは森林は減る一方だ」▼廃校もしかり。北海道の雨煙別(うえんべつ)小は宿泊型施設によみがえった。自然体験をアレンジする高橋慎(まこと)さん(60)は「今の子どもたちは情報の感じ方が目と耳だけになっている。手でさわる、においをかぐ、味わう。五感全部をよみがえらせると生き生きした子どもが戻ってくる」▼朝日歌壇に横浜の小学1年、高橋理沙子さんの〈糸の先にするめをつけてつったんだ大きいザリガニだこれどうしよう〉。せめて子らの夏よ、ふくらめ。

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