昨日から夏休みに入った。
小山の様に宿題は出ているが、まだまだ時間はある。と言い訳をして、VR装置の電源を入る。
最近、と言っても2,3ヶ月前からなのだが、とあるネットゲームに嵌っているのだ。
王道的な剣と魔法と言う世界観。
ゲームの題はロスパッド。
名前の意味はさっぱり。
公式のストーリーを読めば何か分かるかもしれないが、そんな面倒なことはするべきではない。じゃなくて、したくない。
などと言った、アホな事を考えているうちに、起動も終え、ロスパッドのログイン画面が目の前に表示される。
すでにVR空間の中なのだが、相変わらず何時入ったのか分からない。
高1の自分に、仕組みどうたらと聞かれても困る。
そういう物なのだから、そういう物なのだ。
っと、また変な方向に意識が飛んでしまった。
「ID、*****。パスワード、**********」
とっとと、音声入力をしてINをしよう。
時間は有限なのだ。
ログインも無事に終わり、キャラクターの選択に変わる。
とは言え、お金の問題で枠は一つしか開けていなく、一択なのだが。
普段なら飛ばしている、キャラのステータスを何となく確認する。
名前は信臣。読みは普通にのぶしん。
Lvは39。と、中堅の一歩手前と言った辺りか。
クラスはアサシン。これは1対1に奇襲速攻に特化したクラスだ。
所属国家はキャーブ帝国。新興の国で拡大嗜好の軍国。
うむ、昨日落ちた時と変わりなし。
変わっていたら怖いが。
確認も終わったので、GOっと。
昨日ログアウトした宿の一室で、目が覚める。
とりあえずパッパッと装備やらアイテムやらの確認をする。
「武器よし、防具よし。ポーションはよしで、所持金よし。
……メールも特に来てないっと」
特に困った点は無いので、部屋をでる。
「クエストの確認と暗殺優先リストの更新もしておかないとな」
ぶつぶつと、独り言で怪しい事この上ないのだが、声に出して確認するのは何かと忘れやすい、自分にとっては重要なことだ。
部屋を出た廊下の先にある階段を下りる。
一回に降りた先にある光景は、……うむ、どこも怪しいところの無い宿屋だ。
宿泊費は前払いしているので、そのまま外にでる。
宿の外は大通りで、鎧やらローブやら服やらを着た人で溢れかえっている。
ギルドにも入っていないし、フレンドも少ない、ソロ野郎はとっとと狩場に向かいますかね。
都市のポータルから、いくつかのポータルを経由して、国境近くの町まで一気に移動する。
使用料が少々懐に響くが、これ位なら直ぐに稼げるから問題なし。問題……なし。
此処からは徒歩で移動し、森に入って国境を越える。
国境を越えた先は敵国。
現在同盟は組んでいないし、先週辺りから焦げ臭くなってきている。
掲示板では今週か来週辺りに戦争に突入するだろうと、予測されている。
と言うことで、今からやるのは敵国の国境警備兵と近くで狩りをしているPCの暗殺っと。
さぁて、サクサクッと逝きましょうかね。
探索を始めて1分少々、さっそく警備兵を発見。
周りに人の影もなく、戦いやすそうだ。
Lvは向こうの方が高いが、アサシンにとっては障害になるほどではない。
先回りをし、木に登り【ハイド】で姿を隠して奇襲の準備をする。
あと3歩。
あと2歩。
あと1歩。
通り過ぎて背を向けた。今!
音も無く飛び降りて、無防備な背中に【バックスタッブ】で突き刺す。
この【バックスタッブ】と言うスキルはアサシンの代名詞的なスキルで、相手に気付かれていない状態で背後から使用すると、物理・魔法防御を無視した一撃を与えることができるのだ。
うーん、とてもいいスキルだ。再使用までの時間も短くクリティカル率も高い。
次のアップデートで修正確実。と言われているが、今は気にせずぶっ放す。
警備兵だが、一撃で葬ることは出来なかったので、反撃をしてくる。
これが、PCなら大抵パニックを起こして一方的に攻撃できるのだが。
まぁ、仕方が無い。大ダメージを与えたのには変わりは無いので、一気に押し切る。
振り向きざまの横薙ぎの一撃を一歩下がることで回避。
開いた胴に向かって前蹴りを放つが、これは盾で受け止められ、払われた。
っと、判断ミス。
打ち払われ、体勢が崩れたところに上段からの振り下ろし。
転がって避けようとするが、ザックリ腕を切られる。
HPが一気に1/5ほど減った。痛い。すげー痛い。
此処で、離れると笛を使って仲間を呼ばれるので、大ダメージ覚悟で飛び込む。
飛び込む際に直突きを遭わせて来た。コイツ本当にNPCかよ。
とりあえず、何とか回避。
飛び込んだ勢いのまま、【デッドブロー】で短剣をぶち込む。
相手の皮鎧を貫通して深く突き刺さる短剣。
……警備兵のHPは0。
倒せた。……あー、心臓に悪! とりあえず、油断大敵、深く反省だな。
とりあえず、ドロップアイテムを回収して移動しよ。
狩場来て1体目で死亡とか馬鹿な事にならんでよかったぁ。
次、ケチらんとちゃんと毒つかお。