時空管理局。
独自のシステムにより各次元世界を管理し、質量兵器や危険なロストロギアの規制や各次元世界の監視や管理。
時には、次元犯罪者や違法研究、ロストロギア密売行為などの摘発など、次元世界で起こる様々な事態に対応する為の機関。
「法と正義を護る正義の組織」を謳い文句にしている魔導師中心の戦闘集団である。
だが現在の時空管理局は、その理念から既に大きく逸脱し始めている。
次元世界とは、別に並行世界とかを意味している訳ではない。
飽くまで便宜上の言い回しでしかなく、空間移動に手間が掛かり過ぎるからだ。
その為に開発されたのが異次元空間を使った次元跳躍航法だった。
その次元跳躍航法が、多くの次元世界への航行を可能にした。
それだけでも次元犯罪も増える・・その警察機構な筈だったのだが、各次元世界の管理を始めたのは約150年前。
75年前に管理局が成立したが、組織として巨大になり過ぎた事による弊害なのか腐敗の一途だった。
時空管理局は警察、軍隊、裁判の要素を併せ持つ、歪な強大な権力機構であり、法と正義を護る為には手段を選ばず、如何なる犠牲を伴おうと是とする風潮。
それを影で支配運営する最高評議会の存在に対する抑止効果がなく、既に管理局は最高評議会の私兵集団と過言ではなく、もはや独裁的な側面を持っている。
主に「海」「陸」と戦力区分されているのが有名である。
時空管理局地上本部、管理局内部で「陸」や「地上」と呼ばれる彼らはミッドチルダをはじめとする各管理世界全体の地上の秩序と安全を守る為に日々奮闘している。
本局が「海」と称させる背景には、ロストロギアや次元犯罪者などの関わる重要犯罪の捜査の為、次元航行艦を有し各次元世界を渡り歩く“広域捜査”を主な任務の主軸としている事が挙げられる。
その為、つねに死と隣り合わせの危険な任務が常に付き纏う彼らの活動には、地上にはない破格の考慮がされているのも事実であり、優秀な魔導師、最新の設備などは優先して本局に配置されているのが現実だった。
そうした事もあり、地上の魔導師の質は本局に比べ全体的に低く、その機材や設備にも雲泥の差がある。
その為、人々の生活の為に本来は重視して守るべき地上の治安は、激化する次元犯罪者の横行により悪化の一途を辿っており、そこで働く管理局員も充分とは言い難い環境の中で苦しい現実を突きつけられていた。
どうしても次元世界全体に関わる大きな事件と違い、軽視されがちな地上の情勢。
その結果、陸と海の関係は最悪なものとなり、その事が管理局の内部に大きな軋轢を生んでいた。
同じ管理局とは言っても、陸と海では思想や主義に大きな隔たりがある。
互いに協力し合うという考えが出来ない背景には、やはり慢性的な人手不足が原因となっているのだろう。
質量兵器の撤廃を訴え、魔法至上主義を掲げる管理局に置いて、魔導師の存在は非常に貴重な戦力だ。
しかし現実はそう簡単ではない。
此処ミッドチルダでも、魔導師として大成出来るほどの資質を持つものは多くなかった。
ほとんどの人間は大した魔法資質を持たない一般人と言うのが現実だ。
そんな才能頼りの不確定な力に頼っていれば、当然ながらこうした問題が生じる事は必然とも言えた。
だからこそ、管理局内部でも優秀な魔導師を巡って諍いが起こる。
故にその慢性的な人材不足を解決する為に違法な研究が管理局で起こったのは至極当然であった。
【人造魔導師】
優秀な遺伝子を使って人工的に生み出した子供に、投薬や機械部品の埋め込みなどの方法で、人工的に強力な魔力や能力を持たせた者の事。倫理的な問題や、技術的にも様々な無理が生じる。
莫大なコストに見合う成果が得られる保証もないことからよほど頭のおかしい者でない限り、手を出さない技術だ。
【管理局秘密研究所】
その施設は、過酷な人体実験や研究を行う非合法の研究施設だった。
そのとある一室、通称ゴミ捨て場と呼ばれる場所のおびただしい数の死体や壊れたデバイスが誰にも知られる事なく破棄されていた。
計画は完璧。
元々破棄されている死体は人工的に実験から生み出されたものなので発覚する事は無いだろう。
最高評議会の主導の元、研究は進むに連れ成果が見え始めついには実用寸前までこぎつけ始めた。
しかし、誤算があった。
破棄された死体の中に一人の少年がいなかったのである。
それは些細な事。
所詮は失敗作の破棄された実験体が一匹が逃げ出しただけ。
例え知ってたとしても別に気にもとめもしなかっただろう。
とても些細な事。
彼らが気にもとめなかった少年に魔神が宿った事。
後に時空管理局に大禍を招く事はいまだ誰も知るよしもなかったが必然だったのは事実なのかもしれない。
〜プロローグ〜 『魔神が転生した日』
「・・・・・・此処は?」
彼はふと目を覚ますとそこは地獄みたいな場所だった。
周囲はおびただしい数の死体の山。
「何なんだ此処は?何がどうなっているんだ」
まだ覚醒できてない頭を必死に働かせる。
(俺は確かに死んだ筈だ・・というより殺された筈だった)
『ゼロレクイエム』
世界の敵皇帝ルルーシュを正義の味方ゼロが倒す事で世界に満ちた憎しみの連鎖を断ち切る計画。
世界がより良き未来を築いていく為に、ルルーシュは己の命をかけて実行した。
皇帝直轄地日本での反逆者処刑パレードの最中、スザクが扮したゼロに胸を剣で貫かれ、ゼロレクイエムが成就された。
人々にギアスをかけてきた代償として、そして人々の命を奪ってきた己の罰としてルルーシュは死んだ筈だった。
こうしてルルーシュの十八年という短い生は終わりを告げた・・筈だったのだが。
(おかしい…何がどうなっているんだ)
前世の記憶と言えばいいのか、他にも様々な世界の記憶がある。
自分が一昔前の侍のような姿をした世界。
ナイトメアがない世界。
スザクが強化服で戦う世界。
ナナリーがナイトメアに乗って戦う世界(そこでは自分は魔王C.Cとなり人々にギアス与え…世界に混沌を生み出していた)
(……何なんだ、この記憶は?)
ルルーシュの中にある数多の記憶。
情報。
想い。
その中で体験した記憶が自分の中にある。
『IF』
もしもの世界。
ここで、ルルーシュは脳裏にパラレルワールドと言う言葉が浮かぶ。
パラレルワールド。
並行して存在する世界。
漫画やSFなどで使われる用語であり、彼自身知識として持っている。
(馬鹿な、ありえん…何故俺にこんな記憶がある…そんな馬鹿な事がありえるのか?待て、落ち着け、落ち着くんだ)
理解不能な事が続く中で、ルルーシュは自分に言い聞かせながら、必死に考える。
(そんな事がありえるのか……いや、俺のギアスやCの世界、コード、それらを考えれば、無いとは言い切れないが)
いまだに思考が混乱する。
これほどまでに非常識な事態に陥った事は無い。
考えれば考えるほどに訳がわからない。
「ちっ…まあいい。考えるのは此処から脱出してから考えるか」
ルルーシュは舌打ちしながら、立ち上がると周囲を見渡す。
(此処はどこかの死体廃棄所かなにかか?)
捨てられたおびただしい数の死体を見ながら推察する。
(どうやって脱出する?)
周囲を見渡しながらどう見ても脱出が不可能としか言い様がない。
(どうする?ん、ちょっと待て?他のギアスが使えるか試してみるか)
目をつぶり、目が開けてみると、そこには奇妙なマークが浮かんでいた。
眼球だ。
その中だ。
本来であれば、澄み切っているその瞳に内部から侵食していくかの様にそれはある。
両目の奥底から光が生まれ、赤く輝く奇怪な不死鳥の模様。
その瞳が出た時、世界の理は反転され、そこに元々いなかった様にその場からルルーシュは消え去った。
【ミッドチルダ 南部 森林地帯】
あの死体廃棄所から脱出してみれば、外は夜になり、豊かな自然に囲まれた森の中。
脱出した本人は混乱の極みに達していた。
当の本人は地球かと思って脱出してみれば、月の光に照らされた。
夜空を見上げてみれば、月が二つあるという彼自身にとって訳のわからない状況。
そして、目に映るのは白く小さな子供の手。
指を動かしてみて、その手が自分のものである事を確かめる。
それは確かにルルーシュ自身のものであった。
「おかしい…何がどうなっているんだ?」
何が起こったのか、あまりの動揺に揺れるルルーシュの思考はもはや混乱の極みだった。
彼は頭はいいし、回転も速い上に策略や計算高さなどは人よりも何倍もいいのだが、逆境には極めて弱かった。
(此処は異世界。そんな馬鹿な事があるのか?俺は地球ではなく別世界にいる?そんな事がありえるのか……)
彼は現実逃避しそうな心を押さえ付けながら少しずつ気を落ち着かせる。
(まあ、なんにせよ?今は情報が必要だ)
ルルーシュはため息を吐きながら、情報を集めて回り、今後とるべき行動をどうすればいいか考え込んだ。
(まあ、此処が未開の地ではなさそうだ。遠く見ると、タワーが見えるしな。どこか人のいる所に付けば何とかなるだろう……)
何故なら…自分には王の力がある。
誰であろうと自分には逆らえない。
絶対遵守の力が。
「まったく一体全体何の冗談だ、これは?」
ルルーシュはまたもやため息をついた。
ため息を吐くと幸せが逃げるというがこうも不可解な状況ばかり起こるとため息も吐きたくなる。
彼の名はルルーシュ。
悪逆皇帝、魔王、魔神と人々から恐れられた…彼がミッドチルダに降り立った瞬間だった。