現代日本の直面する問題は、17世紀以来の「長い近代」が終わり、主権国家にもとづく近代世界システムが終焉を迎えていることにある。特に新興国が低賃金によって先進国の製造業を駆逐し、それによる過剰貯蓄をアメリカが吸収して集中的に運用するグローバル不均衡が、世界経済の不安定要因だ――という本書の指摘は、2008年の金融危機によって実証された。
「デフレ」といわれているのも、本質的にはこうしたグローバル化による相対価格の変化である。サービスの価格が上がる一方、工業製品の価格は大きく低下しており、90年代以降、世界的にdisinflationが続いている。新興国の貯蓄過剰によって長期金利も世界的に低下し、国際資本移動が大きくなったため、今や金融市場に国境はない。だから中央銀行が通貨を過剰に供給して景気を刺激しようとするのはナンセンスで、余ったマネーは他国に流出して資産バブルを引き起こす――これも日銀の量的緩和がアメリカの住宅バブルを引き起こしたことで裏づけられた。
日本は、近代化の局面を終えて「新しい中世」圏に入ったので、かつてのような高度成長を再現することはできない。いつまでも近代の「ものづくり」パラダイムにこだわっていることが産業構造の転換を遅らせ、潜在成長率を低下させている。いま必要なのは、労働生産性の高い製造業の生産性を上げることではなく、生産性の低いサービス業の生産性を上げることだ。特に流通、運輸・通信、金融業で「生産性革命」が必要だ。
――と要約すると、多くの経済学者の考え方とそれほど変わらないが、こうした歴史観を多くのデータで実証しているのが特徴だ。日本が直面している本質的な問題は、グローバル化や潜在成長率の低下などの長期の問題であり、簡単に是正することはできない。必要なのは、日銀の金融政策や「強い社会保障」で問題が一挙に解決するなどという「うまい話」はないという事実を、まず政府が認識することだ。それだけでも、水野氏が政権に入る意味はあろう。
日本は、近代化の局面を終えて「新しい中世」圏に入ったので、かつてのような高度成長を再現することはできない。いつまでも近代の「ものづくり」パラダイムにこだわっていることが産業構造の転換を遅らせ、潜在成長率を低下させている。いま必要なのは、労働生産性の高い製造業の生産性を上げることではなく、生産性の低いサービス業の生産性を上げることだ。特に流通、運輸・通信、金融業で「生産性革命」が必要だ。
――と要約すると、多くの経済学者の考え方とそれほど変わらないが、こうした歴史観を多くのデータで実証しているのが特徴だ。日本が直面している本質的な問題は、グローバル化や潜在成長率の低下などの長期の問題であり、簡単に是正することはできない。必要なのは、日銀の金融政策や「強い社会保障」で問題が一挙に解決するなどという「うまい話」はないという事実を、まず政府が認識することだ。それだけでも、水野氏が政権に入る意味はあろう。
コメント一覧
>それだけでも、水野氏が政権に入る意味はあろう。
なんかちょっと水野氏に期待してしまいますね。
>近代の「ものづくり」パラダイム
ですが、そこに住んでいる人間がようやくチョンマゲ切った程度の人間では、いまだ「ものづくり」のパラダイムに乗らないと失業者となり、生活保護が主な収入源みたいな北九州や筑豊のような町になってしまう。
地方分権なんてぬるいことを言わず、東京と地方の通貨の分断がなければ地方は永久に東京にタカり続け、自立できず救われることは無いでしょう。
>生産性革命
地方格差に気づくことなく第2、第3の小泉改革を行っていると、いつか都市文明を呪ってプノンペンをゴーストタウンにしたクメールルージュのような事態は否定できません。twitterで武力の無い日本では革命は起こせないみたいなことを書かれてましたが、任期制の自衛隊員の再就職率が近年悪くなってるそうです。(国家公務員の天下り規制も見え隠れしてますし)中国のように弾圧を徹底するか、チェコスロバキアのように切り離すかせずに、全国統一の生産性革命を起こせば、きっと・・・
なるほど、日本は特に産業構造を変える必要はないと
読めますね。日本のバブル崩壊を第2の敗戦と言った人がいたかどうか。。。金融大量破壊兵器とも。
流通、運輸・通信、金融業ときいてピンときませんが
ゆうパックwかと。もっとましな「ものずくり」が必要ですね。i~Pad とか kindleてなんなんだろうと。
ものづくりの貧困?経済学の先生は金融最終兵器つくるあるよ。
日本版オランダ病
オランダ病、天然ガスでの輸出超過でギルダー(当時のオランダ通貨)レートが上昇して国内製造業が廃れ不景気になった
日本は輸出優遇策や人件費下げての輸出超過で円レートが上昇して国内製造業が廃れ不景気になった
経済学の教科書に載せても良いですね。
「デフレを容認する者は社会主義者だ」というリフレ派の水野批判の言説は全く呆れ返ります。
水野氏はウォーラーステインの世界システム論を援用して、「なる論」=歴史を語っているのに対し、リフレ派は「べき論」で批判しようとしている。彼等には歴史認識というものが一欠片もない。
社会はトンデモ経済学派の実験場ではない。
論理的には、中銀の金融緩和が海外バブルを形成したとしても、それが円安経路を通して景気刺激効果があるのであれば、ナンセンス(無意味=無効)とは言えないでしょう。
問題は、過剰な緩和政策(なにをもって現時点で過剰と判断できるかも難しい)が長期的にインフレを促進し、結果的に、より日本国民の生活水準を低下させる(or向上を妨げる)かどうかですね。
個人的には、法人税減税、急激な労働&産業規制緩和のみでは、政治的に成立しないので、多少、長期的な弊害があっても、日銀の緩和政策、最低賃金規制、などを併用して、のろのろとやっていく以外選択肢はないように推測します。
>金融市場に国境はない。だから中央銀行が通貨を過剰に供給して景気を刺激しようとするのはナンセンスで、余ったマネーは他国に流出して資産バブルを引き起こす――これも日銀の量的緩和がアメリカの住宅バブルを引き起こしたことで裏づけられた。