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硫化水素自殺は誰が発案したのか

2010 212day @451Beat

以前、俺は自殺関連のサイトを運営していたのだけど、1年くらい前かな、レン鯖屋さんから急に垢デリられたんだよね。その後、海外無料レン鯖で再アップしてたんだけど、そこも先日、削除されてしまった。また新たに垢取ったりする手間が面倒くさいので、ここで再アップします。なお、そこでは別にいろんな文章も上げてたけど、個人的にこの文章が一番資料価値としてはあると思うので、この文章だけアップします。なお、一部リンクについては既に切れています。修正する気はありません。なお、作成は08年5月です。

前書き

ネット自殺と言えば練炭自殺が定番だったのだが、2008年に入ってからは硫化水素自殺がネット自殺の代名詞のようになってきています。練炭自殺が人を集めたり、準備が大変だったりするのに対し、硫化水素自殺は自分ひとりで気軽に自殺できると言うことで、今後、自殺方法としては更に増えそうな気がします。この自殺方法は更に拡大し、自殺方法としては一般化しそうですが、黎明期の今のうちにこのような方法を見つけた人と時期を特定しておきたいと思ったので、ここに簡単ですが調査結果を書いていきます。

1.きっかけ

元は以下の事件をヒントに硫化自殺の方法が検討され始めたようです。

  • 2005年12月29日:東京新聞 - 硫化水素か母子3人死亡 秋田・泥湯温泉

 二十九日午後五時ごろ、秋田県湯沢市高松の泥湯温泉「奥山旅館」から「屋外で男女四人が倒れている」と一一九番があった。四人は東京都豊島区西巣鴨二、東大理学部助手松井泰さん(47)一家で、妻の同大客員研究員理恵さん(42)、長男の小学三年日々太(びいた)君(8つ)、二男の小学一年智足(ちたる)君(6つ)の死亡が確認された。松井さんも意識不明の重体。湯沢署などは硫化水素ガスによる中毒とみて原因を調べている。 

 湯沢署や奥山旅館従業員らによると、一家はいったん全員で外出し、先に戻った松井さんが午後三時ごろ、戻らない三人を心配して旅館従業員六、七人と捜しに出た。旅館から二百メートルほど離れた駐車場わきのくぼ地(直径約二メートル、深さ約一・五メートル)で倒れている理恵さんら三人を発見。松井さんも子どもの一人を助け出そうと抱え上げた時、倒れたという。

 松井さん一家は二十七日から三泊四日の予定で宿泊中。同旅館を訪れたのは二度目だった。

旅館周辺の積雪は約一メートル。消防などによると、現場は地熱によって一部で雪が解け、空洞ができている部分もあり、四人はくぼみにたまった硫化水素ガスを吸って倒れたらしい。

 子供二人が円盤状のおもちゃを投げて遊んでいたといい、倒れていた近くに円盤が落ちていた。雪の中に入った円盤を拾いに行ってくぼ地に落ちた可能性もある。

 同旅館には当日、四人を含む十七人が宿泊していた。他の宿泊客で気分が悪くなった人はいないという。同旅館では二〇〇〇年二月十九日、温泉の源泉から発生した硫化水素ガスが旅館内に流れこみ、宿泊客十五人と従業員ら六人の計二十一人が目の痛みなどを訴える事故があった。

■積雪の温泉地潜む危険 : 「冬場の温泉地は雪中に噴出した硫化水素ガスがたまる“くぼ地”ができやすくなる。とても危険だ」。阿岸祐幸・北海道大名誉教授(温泉医療)は今回の事故について、冬場特有の現象が大きな原因になった可能性を指摘する。

 硫化水素ガスは、空気中の濃度が0・15%程度で即死するほど強い毒性を持つ。このため、入浴施設には、浴場内の硫化水素をはき出す換気口が設けられているが、その周辺に積もった雪はガスの熱で解けて、くぼ地ができやすくなる。硫化水素ガスは大気よりも重く、低地に流れ込むのが特徴。普通は大気中に拡散するが、冬場は雪中にできたくぼ地などにたまる場合もあり、逃げ場を失うと高濃度のガスが充満してしまうという。

 夏場でも登山客らが風のない場所で、充満したガスにさらされ中毒症状を起こした事故が起きているが、冬場の温泉地の危険性は都市部から訪れた観光客には分かりにくい。阿岸名誉教授は「過去には有名な温泉場で無風状態の時に、スキー客が、硫化水素ガスのたまったくぼ地に滑り降りて即死したことがある」といい、今回の事故の場合、「危険を知らせる掲示板などがあったとしても積雪で隠れてしまい、被害に遭った家族は気づかなかったのではないか」と推測している。

 <メモ>硫化水素 : 硫黄と水素の化合物。可燃性の有毒ガスで、無色だが卵の腐ったようなにおいがする。自然界では火山ガスや鉱泉に含まれ、下水処理場やごみ処理場などで悪臭の原因となる。高濃度のガスにさらされると、目や鼻、のどの粘膜に強い痛みを感じ激しい中毒症状を起こす。2002年3月に愛知県半田市の下水工事現場で、高濃度の硫化水素を吸ったことから作業員5人が死亡するなどしている。

これを見た「自殺に関する一考察」の管理人が2006年2月16日に2chメンタルヘルス板に以下のスレッドを立てます。

既にこの時点でどのアイテムを使えば硫化水素を発生させられるかが記載されています。更にそのスレッド中で発生に必要な分量なども詳細に記載されていることから、この「自殺に関する一考察」の管理人がこの自殺方法のたたき台を作っていると思われます。

自分が拾うことが出来たログでは2006年5月4日までこのスレッドが存在していたことが分かります。その約1年後、2007年3月6日に以下の事件が起きます。

  • 2007年3月6日:nikkansports.com:香川の大学生、有毒ガス発生させ自殺か

6日午後1時半ごろ、高松市太田下町のアパートで、浴室に住人の香川大4年の男子学生(24)が倒れ、異臭が立ちこめているのを、家族の通報で駆けつけた消防隊員が発見した。大学生は間もなく死亡が確認された。

 高松南署の調べでは、浴室には混合すると有毒ガスが発生する洗剤の空き容器が残されており、玄関ドアに「硫化水素発生中」などと書かれた張り紙があった。パソコンに遺書めいた書き込みがあったことなどから、自殺したとみて死因や動機を調べている。

現場は住宅地帯。近くの市立太田中学校は部活動を中止して生徒を下校させたほか、市立太田南小学校は1、2年生の下校に担任が付き添った。付近で体の不調を訴えた人はいないという。

おそらくこの自殺は「【ムトウハップ】硫化水素で逝こう!【サンポール】」スレッド、及び「自殺に関する一考察」を参考に実行されたようです。2chでは、上記事件発生後、2007年3月31日に今の硫化水素自殺の総本山スレ、【ノックダウン】硫化水素による自殺【H2S】が立っています。

ただ、2007年はまだ現在ほど硫化水素自殺は多発しておらず、7月に2回、10月に1回の計4回が硫化水素自殺として実行されたのみで終了します。

ではいつからこの自殺方法が増えたのか?件数で言うと、2008年では以下の通りです。

  • 1月 - 5件
  • 2月 - 7件
  • 3月 - 13件
  • 4月 - 70件以上

4月は特に4月上旬くらいから鰻上りに上昇しています。

スレッドを見ているとTV等マスコミ発表のニュースを見てネットで検索し、2chのニュース速報板へ、そこからメンヘルサロン板へ誘導と言う流れで辿り着いた人がかなりいるようです。2chにもよく書かれていますが、TVでの報道が結果的に「この続きはウェブで!」と言う形で視聴者に伝わり、硫化水素スレに誘導されていると言う結果です。

2.「自殺に関する一考察」の管理人はどんな人物なのか

この自殺方法をほぼ一人で考えつき、改善していった「自殺に関する一考察」の管理人はどんな人物なのか?この「自殺に関する一考察」はzipファイルでも配布されてます。それには爆弾に製造方法のページもあり、管理人の名前として「日向克史」の名前が書かれています。この名前をググってみるとどうやらザ掲示板に出入りしていた様子です(途中、名前を克史から博之へ改名との記載がある為、「日向博之」で検索)。そこの書き込みから拾ってみるに以下の情報が得られました。

  • 04年2月1日の日付で「俺が大学受験失敗したら」と言う書き込みが見つかったので、現在大学生またはもう社会人か?
  • 爆弾に詳しく、ネット上で爆弾製造の情報をアップしている
  • 化学分野にも詳しい
  • (当時は)広島在住

残念ながら、上記の情報までしか辿れませんでした。と言うことで、思い切って「自殺に関する一考察」の管理人に連絡を取って確認してみましたところ、以下の回答をもらうことができました。

まず、私は日向克史(日向博之)ではありませんし、彼とは完全に無関係です。彼とは掲示板上で会ったり、メール交換なども一切行っていません。

 zipファイルに入っているものの中で私が作ったページは、『自殺に関する一考察』と『ちょっとHな爆弾製造法』の2ページだけです。 「peace.html」「heiwa.html」「ttp.html」と電子回路関係の画像は、3~4年ほど前に日向氏が作って2chに大量コピペていた「爆弾完全マニュアル」を私が保存していたものです。

あと、ちなみに以下の2つの回答も頂くことができました。

(マスコミなどから問い合わせがありますかと言う問いに対して)

マスゴミからの取材の申し込みは、一切ありません。講談社とNHKの中の人があのページを見たことが、アクセス解析によって判明しました。もしマスゴミのどこかからメールフォーム経由で質問などがあったとしたら、場合によってはページの内容を更新するという形で取材に答えることもあるかもしれませんし、華麗にスルーするかもしれません。

(他に何か言いたいことがあればと言う質問に対して)

  • H2S Suicide developer
  • さあ、ゲームはもう始まっています
  • ボクは自殺のニュースが愉快でたまらない
  • 警察諸君、私を止めてみたまえ
  • 人の死が見たくてしょうがない
  • 私はマスゴミのセンセーショナルな報道が愉快でたまらない
  • 積年の大怨に硫化水素の裁きを
  • 我々へ向けた匕首がお前たちの上に降る。皮肉を味わえ!
  • 我々は10年前の遺物ではない。まっさらな憎悪なのだ!
  • 神よ、我らの地獄への門出に栄光を!
  • 何度でも現れてやる!お前たちの前に!

彼の発案した方法で何人もの人が自殺している、と言うのはアナーキストっぽい彼としては本望の状態かも知れません。自殺界で名を残す人になってしまうだろうと思います。これについても、

自分が生きた証を歴史に残せたので、ガチで本望です。名無しなので名前は残らなくてイーデスハンソン。今の所死ぬ予定はありませんが、私が死んだ後は、死神からキックバックを頂くことにします。

と言うコメントを頂きました。

3.最後に

今回、このテキストをアップするのは正直躊躇しました。なぜなら硫化水素自殺の方法についての情報にかなり近づいてしまうからです。しかしながら、以下の理由でアップすることとしました。

ウェブ魚拓の担当者の意見はちょっと以下に引用します。

(自殺方法を削除しろと言う警察の要請に対して)要請して頂いたような単に「自殺する方法」である有害情報を全て消して世の中が「きれい」になってそれでも自殺が減らなかった場合はどうなるのでしょうか。

今グレーゾーンとされている領域が全部消えてなくなったら、今ホワイトとされているものがグレー扱いされるのではないですか。今度はテレビ局に「ドラマ等で自殺を肯定的に扱わないように」とか出版界や映画界に「自殺を扱う内容は自粛せよ」と言うのが容易に想像できます。

人は情報があるから自殺するのではなく、その人その人の事情によって自殺していると考えられます。極端な話、物心ついた日本人なら誰でも首吊りの方法を知っているのですから。


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