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医療観光:海外富裕層呼び込みに期待 一方トラブル懸念も

 高水準の医療を売りに、海外の富裕層を呼び込む「医療観光」の動きが活発になっている。経済的な波及効果も大きく、関係者の期待感が高まる一方で、通訳の質や患者とのトラブルを懸念する声も広がっている。【八田浩輔】

 「代表的なコースは、1泊2日で健診を受けた後、京都や箱根、横浜、富士山など中国人観光客の間で『ゴールデンコース』と呼ばれる東京-大阪間の観光名所をたどります」。日本旅行の広報担当者は話す。大阪市の医療法人と提携し、昨年4月からがんの早期発見に有効とされるPET(ポジトロン断層法)検診を組み入れたコースを提供。予算は4~5日で約100万円だが、今年6月までに約110人が参加。13年には年間2000人以上の利用を目指す。東京都港区の虎の門病院は4月、JTBと提携し、中国人向けの健康診断ツアーの受け入れを始めた。料金は日本人の2~3倍。通訳料は客が別途負担する。当面の目標は月10人程度だが、長期的な収益源と見込む。

 医療観光の市場規模は拡大を続け、タイやシンガポールが欧米や中東の富裕層取り込みで先行する。先月18日に閣議決定された政府の新成長戦略は外国人患者の受け入れ拡大を柱の一つに位置付け、「医療滞在ビザ」の新設も盛り込まれた。

 日本政策投資銀行は、20年時点の医療観光の国内潜在需要を年間43万人、市場規模を約5500億円とはじく。こうした数字は地方にも魅力的だ。福島県は今春、がん検診と県内名所観光を合わせたツアーを企画。県の負担で上海の経営者らを受け入れた。医師不足が深刻な同県だが、県観光交流課は「健診だけなら影響はない」と話す。また日本人間ドック学会の奈良昌治理事長は、人間ドックが戦後、日本で始まった経緯を強調、「世界をリードする日本の予防医学を世界に広めるチャンス」と意気込む。

 一方、虎の門病院の荒瀬康司医師は「説明がきちんと伝わるか」と言葉の壁を不安視する。年間延べ約2万人の外国人患者を受け入れている聖路加国際病院(東京都中央区)は「『観光中心、医療はおまけ』ではなく、医療に重きを置いてほしい」(経営企画室・国際部)と医療観光には距離を置く。日本人を基準とした検査数値の妥当性や、健診後のフォローの難しさの問題も指摘されている。

 医療観光に詳しい真野俊樹・多摩大教授(医療経済学)は「余裕のある病院が主導してやるべきだ。国が過剰に推進すると、ゆがみが生じる」と指摘している。

毎日新聞 2010年7月5日 11時48分(最終更新 7月5日 11時59分)

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