映画「RAILWAYS(レイルウェイズ)」を見ました。一流企業の重役ポストを約束されながら、古里に住む母の病気を機に、49歳で一畑電車の運転士になる主人公。「そんな人間はなかなか居ない」と思いながら、同じ49歳という親近感もあって、ついつい物語に引き込まれました▲東京の高層ビルと、緩やかな時が流れる島根の風景の対比が素晴らしい。片や新幹線、こなた日本最古級の電車「デハニ50形」。映画「うん、何?」を見たときも思ったのですが、古里・島根を愛する錦織良成監督の温かい「目」が、この作品の随所に表れています▲息子が母に、東京で暮らすことを提案するシーンがありました。しかし母はやんわり拒みます。自らの死を悟ったのでしょう、「自分の家で死にたい」と言う母。ただ、亡くなった場所は病院でした。かつての日本では在宅死が当たり前だったのに、今では8割の方が病院で亡くなっています。病院死が悪い訳ではありませんが、映画を見て、複雑な思いも心をよぎりました。【元田禎】
毎日新聞 2010年8月1日 地方版