米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で日米両政府は、移設先の同県名護市辺野古周辺に建設する滑走路について、今月末にまとめる報告書に、従来のV字形の2本案と、日本側が主張する1本案の双方を併記する方向で最終調整に入った。最終案の決定は、11月の沖縄県知事選への影響に配慮し、12月以降に先送りする。
5月の日米共同声明では、代替施設の位置、配置、工法の検討を「8月末までに完了させる」としていた。だが、地元の頭越しに移設案を固めてしまうと、11月28日の沖縄県知事選で大きな争点となり、移設実現にマイナスになると日本側が主張。米側も配慮を示した。
滑走路の詳細な位置も含む移設案を最終的に確認する日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)は、11月中旬のオバマ米大統領の来日に間に合わないことが確実で、年を越す可能性も出てきた。
これまでの日米の外務・防衛当局の専門家協議では、工法は埋め立てとすることで合意。滑走路について米側は、2006年に日米が合意した「V字案」が最善との立場を維持している。一方、日本側は滑走路を1本に減らす「1字案」(「1」はローマ数字)を主張。これだと、埋め立て面積が少なく環境への影響が比較的小さい。菅政権としては政治的に自民党政権時代の案に戻るわけにはいかない、という事情もある。
今月末の報告書は「安全」「運用」「騒音」「環境」「地元への影響」の5点について、両案の長所と短所を分析する見通しだ。
V字案については、従来の日米合意よりも沖合に移動させる修正案にも触れる可能性がある。沖合修正は、政権交代前に仲井真弘多沖縄県知事が、辺野古移設の受け入れ条件として求めた経緯がある。ただ、その場合も、現行の環境影響評価(アセスメント)が活用できるよう、例えば、南や西の方向に50〜100メートル程度、小幅に移動させる案も想定されている。
一方の1字案も、アセスの大幅なやり直しをしなくて済むように、従来案から位置を大きく変えないようにする。その場合、視界の悪い時に行う計器飛行の経路が、代替施設の北東側の名護市安部周辺や、南西側の宜野座村松田の上空にかかる。地元には事故などの危険性や騒音が増すといった反発が予想される。(伊藤宏、鶴岡正寛、河口健太郎)