そもそも。

梅干しとか瓜とかウドンとか。
「
丑の日に“う”のつくものを食べると夏負けしない」
という言い伝えを利用し、
商売不振に悩む鰻屋を救ったのは、
かの
平賀源内だったとか。
ちなみに。

摂食障害、とくに過食症に対して
長期的な効果が示されている治療法は、
認知行動療法と対人関係療法です。
認知行動療法は食行動に注目し、
同時に、食と体型・体重に関する認知に焦点を当てます。
そういう意味では、症状に直接働きかける治療法ですよね。
一方、対人関係療法は
症状を単なる「指標」として参考にするという治療法です。
何の指標かというと、現在の対人関係が
患者さんにとってどれほど満足できるものになっているか、
どれだけのストレスがあるのかという指標ですよね。
摂食障害の人の特徴として、
「手のかからない良い子」
「協調性が高い」
「過剰に相手の気持を察しようとする人」
「場の空気を読むのが異常にうまい人」
などを挙げることができますよね。
むしろそれが充分すぎるために
かえって問題になっている場合が多いようですよね。

いろんな患者さんとお会いしていると、
ひとつのストーリーが浮かび上がってきます。
人との和を重んじ、配慮・気配りが出来るという素質で
頼まれたことは断らず、仕事を完璧にこなして、
自分の気持ちを表現しないように頑張ることで、
周りの人たちと波風を立てないようにすることは上手になった。
でもマイナスを引き受けることで、
本来の可能性が伸びていく方向が横道にそれた。
頑張る="頑固に気張る(目的のために心身を犠牲にする)"ことで
引き受けたマイナスのモヤモヤの本体は怒りと不安であり、
それを解消する手段の一つが過食嘔吐につながっていて、
本来の可能性が伸びていく方向が横道にそれたのが
「自尊心の低下」や「罪悪感」という事なんだろうなぁ。。。。
こんなふうに患者さんの心の中を解釈しています。
この理解で合ってますよね?
自尊心は、「プライド」と混同される事が多いかもしれませんが、
いわゆるプライドが高い人というのは、自尊心が低いものです。
自分に自信がないから、えらそうな態度をとったり、
自分に対する評価に敏感だったりするのです。
自尊心(セルフ・エスティーム)は自己志向とか
セルフ・エフィカシー(自己効力感)とか呼ばれます。
自分という存在や自分のやり方に対する信頼感とでもいうべきものです。
この
「自尊心」が治療のキーポイントになりますよね。
『
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』からの抜粋(一部改変)です。
「自尊心」の低い人に対して、
挫折体験を与えるような治療は適切ではないのです。
対人関係療法は、コミュニケーションの課題を
患者さんがクリアー出来なかったら
治療上のコミュニケーションを通して、
ハードルをさらに下げます。
このプロセスのすべてが治療になるのです。
課題が達成できれば自信につながり、
達成できなければ交渉能力が身につく、という具合に、
「落第」のない治療法なのだといえます。
私が対人関係療法を強くお勧めする理由の一つがそこにあります。
(中略)
摂食障害の人は「わがまま」を言われることが多く、
それが「自尊心」をさらに低下させます。
また、過食嘔吐という症状に自己嫌悪を抱くことによって、
さらに「自尊心」は低下します。
摂食障害の治し方のポイントは、
あくまでもこの「自尊心」を高めることにあります。
この観点から、対人関係療法の治療者は
・患者の代弁者としての温かい立場
・治療者と患者は「共同研究者」
・希望的・楽観的
という態度を取ることが求められます。
自尊心を決めるポイントと比較していただければ、
対人関係療法が自尊心を高めることをいかに大切にしているかが
よくわかりますよね。
摂食障害、とくに過食症の治療で
対人関係における感情と行動に焦点を当てる対人関係療法は
「モヤモヤしたネガティブな気持ち」の正体と
きっかけを明らかにしていくことによって、
過食という手段に頼らなくてもすむようにしていく治療法です。
やせるための行為が、生活のバランスを乱し、
人生の質を損ねても維持される理由を考える必要がありますよね。
患者さんは、
"「本来自力で何とかすべきこと」が出来ていない"
と感じているため、自らのことを
"「自己コントロール」に欠ける"と責め続けてきたはずです。
本来は別の次元の問題であるのに、
自分を責めていたらストレスをますますため込んでしまい、
ますます病気が悪くなりますよね。
認知行動療法は「絶対によくなろう」という
モチベーションの高い人にはとてもよい治療法です。
ところが、食行動のコントロールは難しく
「自尊心」の低い人は認知行動療法から脱落する率が高い
というデータがあるそうです。
「自尊心」の低い人ほど、
病状が深刻で治療を必要としているのに、です。
水島先生は、こう書いておられます。
日本人はどうしても対人関係の中での自己表現が苦手です。
そのコミュニケーション能力の低さのために、
さまざまな精神的トラブルに陥っています。
対人関係療法をきちんと受けると、
単に「病気が治る」というだけでなく、
その人の生活全般にとてもよい影響を与え、
対人関係にも自信がつくというケースが多いのです。
それまでの人生のあり方の総決算として
摂食障害になっている人たちに対しては、
本質的な治療だと言えるでしょう。
治療をキチンと行っておくと、
人生の別の局面で病気を再発させたり、
他の病気になったりすることも少なくなるだろうと思っています。
摂食障害の対人関係療法による治療では、
1. やせたい気持ちや過食嘔吐そのものについては
あまりじっくりと話し込まない
2. 自分のまわりの人たちと自分の関係をよく考えてみる
3. 積極的に治療に参加する
という三つの大原則があります。
なかでも、「積極的に治療に参加する」という事について、
再び『
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』からの抜粋です。
対人関係療法は「任せておけば治る」というようなものではありません。
あなた自身の問題なのですから、
あなた自身が最も努力しなければなりません。
努力すればするほど治療効果の上がる治療法だと考えて下さい。
ただし「努力」といっても、
それは「過食をがまんする」とか「意志を強く持つ」
というようなことではありません。
努力するのは、
○自分の周りの状況(特に人間関係)に変化を起こすよう試みる。
○自分の気持ちをよく振り返り、言葉にしてみる。
という2点で十分でしょう。
私たちは、あなたの努力を手伝っていくということになります。
面接は、努力の仕方について検討したり、
計画を立てたりする場所だと考えておいて下さい。
この2つに取り組むために、重要な他者に協力してもらうのが
対人関係療法ですよね。
院長
| http://www.kawano-yakuin.com/blog/index.php?e=59 |
|
診察室から::対人関係療法 | 08:00 | comments (x) | trackback (x) |