【カリキュラムの特徴】
得意分野/マンハッタン・アドバンテージ
Sternといえばファイナンス、というのは非常に有名な話です。コーポレートファイナンスのダモダラン
教授を筆頭に充実した教師陣、卒業後はインベストメントバンクやヘッジファンドに行く学生達、そし
てファイナンスビジネスの中心であるウォールストリートとの強い関係。この3要素が全て凝縮し、
Sternの地位を不動のものにしています。一方、近年はファイナンス以外の分野にも注力し、結果を
あげています。特に、ニューヨークという地の利を活かした、マーケティング、メディア・エンターテイン
メント、リアルエステートの分野では、全米でもユニークかつ先進的な授業が充実しています。
パートタイム生の存在/他の学部院との連携
Sternは全米最大のパートタイムビジネススクールとしても有名で、昼間はウォールストリートやミッド
タウンで働いている人々がナイトクラスでは一緒のクラスで学ぶ相手となります。クラスメイトからビジ
ネスの生の息遣いを感じることができるのは、Sternならではの醍醐味です。また、全米トップクラス
のロースクール、Tisch
school of arts(芸術院)やWagner
school(公共政策)との共同授業を取るこ
とも可能で、他学部との交流の中でダイナミックに学ぶことができます。
ケースと理論のバランス
Sternでは、講義をベースに理論を着実に身に着ける授業と、ケースディスカッションを通じて理論の
活きた展開を学んでいく授業が、バランスよく配置されています。ビジネススクールの中には、ケース
ディスカッションをほぼ主体とした授業を行うところもあり、それはそれで非常に有用であると思います。
しかし、実際に授業を受けた経験からいうと、バランスよい組み合わせこそが最大の効能をもたらす
ではないかと感じます。特に、ケースディスカッションではなかなか活躍できず消化不良に終わってし
まう人(私の知っている日本人の多くがこのようなタイプでした)にとっては、具体的に身につく実感の
ある講義形式の授業は欠かせません。講義形式といっても、やはり相当Interactiveなものが多いで
す。
グループスタディと協調性
授業の多くにおいて、スタディグループが形成されます。これは、授業で出た課題を一緒に解いたり、
共同プレゼンテーションをするためのグループで、4-7名くらいで構成されます。授業によってはこの
グループのマネジメントをうまくできるかどうかで、成績や授業で学べることの深みが大きく左右され
ます。Sternで幾つものグループを作って感じたことは、Sternの学生は非常に協調性が高いというこ
とです。他の学校については、人から聞いたことだけしか分かりませんが、もっと競争的であったり
実利的であったりするところも意外と多いようでした。私の勝手なイメージでは、Sternは社交的な、こ
ういうと語弊があるかも知れませんがイージーゴーイングなタイプが多く、あまり競争ギラギラ的な学
生はいません。スタディグループでは多くの時間を共に過ごすので、いい友人がたくさんできますよ。
【カリキュラムの設計】
必修単位数
卒業に必要な単位数は60単位で、最大63単位まで取ることが可能です。授業は基本的に一つ3単
位(一学期間毎週3時間)、または1.5単位(一学期間毎週1.5時間または半学期間毎週3時間等)で
す。合計およそ25〜30個の授業を取ることになります。このうち、必修が8科目あるので、自由選択
は15〜20科目ぐらいになります。いろんな分野を満遍なく取る人や、ファイナンスばかりをゴリゴリや
る人もいて、人それぞれ自由です。ちなみに必修の8科目とは、絶対必修が3科目(会計、統計、ビ
ジネス倫理)、選択必修が5科目(ファイナンス基礎、企業戦略、マーケティング、組織論、マクロ経済、
ミクロ経済、オペレーションの中から5つ)です。
専攻分野(Specialization)
卒業単位をそろえると、ビジネスアドミニストレーションの修士号に加え、その中でのspecialization
の証明が付与されます。Specializationは選択した授業の組み合わせによって変わります、人によっ
て違いますが、1-4つの分野取得することになるようです。分野としては、会計、ファイナンスといった
大きなものから、リーダーシップと組織変革、メディア・エンターテインメントといった細かく特化したも
のまで、21個あります。
2年間のおおまかなスケジュール
プレターム
(8月末〜9月上旬)
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イントロダクションやソーシャライジングのイベントが催されます。
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1年秋学期
(9月上旬〜12月中旬)
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ほとんど必修科目となります。サマーインターンの就職活動もあり、もっとも忙しい時期です。
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1年春学期
(1月下旬〜5月上旬)
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選択科目も始まります。就職活動が引き続き忙しいです。3月中旬のSpring breakには、多くの学生がスタディツアーに行きます。
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2年秋学期
(9月初旬〜12月中旬)
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サマーインターンが終わったと思えば、もうフルタイムの就職活動が始まります。
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2年春学期
(1月下旬〜5月上旬)
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一番のんびりできる時期かも知れません。授業、クラブ、課外活動など、いろんな分野に精力的に学び遊んでいます。
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5月上旬
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5月9日にSternの卒業式がマディソン・スクエア・ガーデンで、10日にNYU全体の卒業式がワシントン・スクエアで行われます。
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【おすすめの授業】
幾つかのお勧め授業(詳しくは教授のページ参照)
ファイナンスでは、コーポレートファイナンスの第一人者であるDamodaran教授、企業破産の権威で
あるAltman教授、企業ガバナンスとリストラクチャリングの気鋭Yermack教授、ウォール街からのた
たき上げ実務家Smith教授、投資理論のベテランSilber教授等々、枚挙にいとまがないほど、顔ぶ
れは多士済々です。経済ではノーベル受賞者のEngle教授、メディアの寵児Roubini教授、ゲーム理
論の伝道師Brandenburger教授。マーケティングでは、ブランド・マーケティングの次世代を担う
Galloway教授、マーケティングの大家Winer教授。組織論では、世界中を席巻したドラッカー教授を輩
出したことでも有名で、今でもLechner教授のように多くのトップ企業を指導している教授陣がいます。
その他、オペレーションのGaur教授、統計のSimonoff教授など、生徒からの信奉厚い個性的な教
授が揃っています。
海外学習について
海外で学ぶチャンスも多く用意されています。世界中で28カ国38のビジネススクールと交換留学する
ことができます。またもっと短期集中型として、2週間で一つの国のビジネス、経済、文化を徹底的に
学ぶスタディツアー(DBI
program)があり、中国、イタリア、アルゼンチン、オーストラリア、アイルラン
ド、等々、普段詳しく知らない国を学ぶことができ大変人気があります。また、3月中旬のSpring
Breakには、学生が企画するスタディツアーが行われ、日本、インド、中国、モロッコなどへ学生が繰
り出します。我々日本人留学生は、毎年日本へのスタディツアーを行っており、これは一生の思い出
になります。あと、変り種として、The
Craft & Commerce of Cinemaという授業では、映画産業につ
いて勉強したあと、実際にカンヌ映画祭に行くというものがあります。
Metropolitan Operaへのコンサルティング
マーケティングの授業の一環として、Metropolitan
Operaに対するコンサルティングを行います。
Metropolitan Operaはオペラの殿堂の一つですが、近年は観客の減少と高齢化が大きな課題となっ
ています。2年前に経営陣を一掃し、新たなメンバーで革新的なマーケティングを打ち出しているとこ
ろです。Sternの学生に対しても、ビジネスプロフェッショナルかつニューヨーカーとしての視点からア
イデアを求めてきており、これに対して我々とディスカッションの機会を持ち、また選ばれたチームは
改善提案をプレゼンテーションします。こうした、マンハッタンならではのユニークな取り組みは他にも
あり、Barneys
New York, Lincoln Center, New York Mets, Atlantic City, Steinway & Sonsへ訪問
する機会もあります。
マイケル・プライス・ファンド
Richard Levich教授による投資実務を学ぶ授業では、実際に2百万ドル(約2.4億円)の基金を運用
します。投資収益は奨学金などに用いられますが、この基金が始まって以来、まだ赤字を出したこと
がないというから驚きです。
スターン・コンサルティング・コープについて
こちらは単位がつく授業ではないのですが、面白い取り組みですので紹介します。このプラグラムは、
学生がNPOに送り込まれ、これまで学んだファイナンス、マーケティング、マネージメント論を実際に
活用するというものです。単なる学習の機会ではありません。受け入れ先のNPOは実際に問題を抱
えていて、Sternの学生が組織経営のプロとして変革・改善してくれることを本当に求めているのです。
経験した人の話を聞くと、プロとして扱われ、責任とプレッシャーは相当なもので、だからこそ多く学ぶ
ことができるとのことでした。受け入れ先のNPOはマンハッタンを拠点におくものが多く、例えばクリン
トン元大統領がハーレム地区の活性化をめざして設立したクリントン・ファンド、などもあります。この
プログラムには大手コンサル会社も協力しており、コンサルタントがメンターとして学生を指導するため、
コンサルタントとしての実務を学ぶ良い機会にもなります。
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