Plastic Tree


それが例え辛い別れであっても、
思い出はいつまでも輝き、幸せで嬉しい──。

 プラスティック トゥリー移籍第一弾シングル『ムーンライト────。』は、物語の映像が目に浮かぶ曲だ。自分の気持ちを隠しながら眺める手元で、小さく光るメールの灯り──。切なくて苦しくなる気持ち。そんなふたりが別々の場所で、同じ時間に遠く輝く月の灯りを見つめる──。彼らの創り出す世界観、そして感情は、他の誰にも産み出せないものがある。一度この曲で彼らを感じて欲しい。

■まずは『ムーンライト────。』ですが、ちょっと臆病さを感じる曲だなって思ったのですが。

竜太朗:この曲に関しては、感情的な部分や穏やかな部分が、かなり自分の中で混ざってたんです。ちょっと絶望的だったり希望的だったり、極端だったんで。ただ、音楽的なところも含めて部分の景色が全然違うような曲で。それが凄く綺麗にうまく繋がったなって。投影したいものはあるんだけど、そこにたどり着くまでに、凄く時間掛かかりましたね。

■次から次へいろんな表現、感情、言葉が出てくるなって。

竜太朗:まずは歌い手としての感情というのを引っ張っていく曲で、曲の一番いい部分でもあったから、ちゃんとリンクさせたいって凄くあったんですよね。だから、一応形としては恋愛についてっていう方式は取っているんですけど……「光」っていう部分で、手元にある光と、一番遠い光とっていう。その対比っていうのを見つけるまで──それを書きたいんだって思うまでに随分時間が掛かったと(笑)。

■遠い光っていうのは、タイトルにもある“月”?

竜太朗:そうですね。それと……手元にあった携帯の光とっていう(笑)。いつも手元にある一番近い光と、本当にあるかよく分かんないような月の光とっていう。

■今回「月」がキーワードですが、歌詞の中にもある「月」は誰とでも繋がっていて、私自身もふとしたときに「あの人も、この月見てるのかな」って思うことがあるなぁと。

竜太朗:たぶん、花鳥風月的なものって、基本的にはみんな何かしら自己投影出来たりするものだと思うんです。俺も日々、感じ方が違うんですよね。例えば、ちょっと欠けてる月と、三日月と、満月ってやっぱり違うし。花鳥風月はそういうイメージがあるんですよ。ゆえに、人が一番心を奪われるものだと思うし。会話してる感じで「あー分かるなぁ」みたいになればいいなって思うところもありますけどね。

■曲的な部分では、どんなアイディアがあったんですか?

正:最初のアイディアの段階ではもう少し、わりとサビのメロディーとかの印象、抒情的な印象にもっと寄せた感じだったんですよ。ちょっと裏寂しい感じの部分っていうのをクローズアップして作ろうかなって思ってたんですけど、段々曲作りを進めていくうちに、いろんなアイディアが次々と出て来て。結果的にわりと1曲の中で、ころころ景色が変わるみたいな感じになってったのが逆に自分の中では、ああなるほど、なんか面白いなって。こういう成長の仕方が出来る曲なんだなっていうのが凄くあったんですよね。

竜太朗:今のバンドのグルーヴ感だったり、それを曲として生かせるところだったり。あとは、エレクトロな部分だったり。ひとつひとつ挙げていくとキリが無いんですけど、それも、レコーディング終わってから何となく「ああー、そういう曲だったんだ」っていう。 (笑)。

■次の曲、“バンビ”ですが、最初は内容的に悲しい曲なのかなって思ったんですが、最終的には凄く心があったかくなって聴き終わった後、号泣してたんです。この詩は竜太朗くん的にはどういった心境で書かれたんですか?

竜太朗:父が亡くなったんで、父との別れをやっと理解したときに、なんか手紙を書こうと思って手紙を歌詞にしたというか……。だから結構パーソナルな曲なんですよね。でもあまりにパーソナルになりすぎるから、それをバンドで出す曲にしていいのかなって思ったくらい(笑)。だけどやっぱり、バンドで、Plastic Treeとして手紙書きたいなって思ったところがあったんですよね。大袈裟な話じゃないんですけど。なんか、ひとつひとつ話せないんですけどただ、こういう風にやったの初めてで……音楽って凄いなって思った(笑)。俺の中で初めてこんな素直になれたのが凄く大きくて。言えなかったことも歌詞にしたら言えるし、自分の中で解答を出さなかったことも、取り敢えずその4分半の中では、解答が出来たような気がして。意味が、ああ、ここにあったのかなって思ったり……そういうのを色々気付いた1曲でもありましたね。本当に凄く大事な曲にはなるだろうなって自分の中では思います。

■私が泣けてきたのは、そこに竜太朗くんの「素直な気持ち」があったから、あったかい気持ちになれたのかなって。

竜太朗:あぁ……。ただ、あまりに個人的過ぎて、これ人に聴いてもらうのどうなのかな?ってどっかでやっぱり俺の中にあって……でも、曲の中で感じた感情と同じもの──それを理解してもらえたっていうのかな。結局音楽なんて、自己満足と、他人がリンクする部分だったりで、こうして理解してもらえたっていう喜びとかは、俺の中で凄くでかいんですよね。……だからそう感じてもらえて本当に嬉しいですよ。

■歌詞の内容とは別に、所々にザ・スミスが登場したり、ザ・キュアーが出没(笑)したり、UK ROCK好きとしては曲でも「やってくれるな〜プラ!」と思いましたね!(笑)。

正:まあまあ、これはもう自分の中では凄い、エバーグリーンな曲になればいいなって。当然自分が影響を受けて来たものも、なんか……素直に出しちゃえ!みたいな(笑)。

■しかもアキラくん、ジョニーマーかと思いましたよ!

正:そういうオマージュも込めつつ(笑)。でも曲の発想としては、やっぱりこれもプラで、こういう曲やってたら聴いてみたいよなって思ってて結果こうなったみたいな。

■曲間の一瞬現れるスミス!あーもっと聴きたい!ってちょっとくすぐられる曲みたいな(笑)。

竜太朗:バンドを始めた頃とかコピーバンドをやってたわけで、それを思い出したというか、変にひねってやるより、まんまみたいなのもいいかなみたいな。

■次の“Rusty”ですけども、16〜7年前にこの曲を作ってるって凄いですよね。ニューウェイブだし、GENE LOVES JEZEBELとか思い出しましたよ!

正:そうですよね、日本で言うとZI:KILLとかね。作ったのが90何年くらいなんで、それほどリアルタイムな音ではないんですけど、こういうちょっと、ニューウェイブっぽいっていうか。ちょっとポジパンですかね。

■ゴシック・ポジパンみたいな?

正:そういうのも、プラ組んだ時にちょっとやりたい音楽性だったんで。そういうのが極端に出てるんじゃないかな。思い切りそういう曲作ろうって作った曲だから。

■なるほど。しかし今作は3曲とも全く違うカラーなのに妙にまとまっててたまりませんね(笑)。

竜太朗:このシングルはミニアルバムに近いというか。充実感がある。よく言う台詞みたいになっちゃうんですけど、今のバンドが持ってる一番こう……キャッチーな部分と言うか、分かり易い部分が入った感じにはなったかなーって。“現状(今)の”プラスティック トゥリーって感じだから。4ヶ月くらいしたら違うことやってるかもしれないし(笑)。

■さて、ケンケンも加入して1年が経ち、8月13日(金)に日本武道館でのライヴを迎えるわけですが。

竜太朗:特に武道館でのライヴは、なにかしらこう……その後先々自分がバンドをやっていくことの意義をいつも問われるような日であって、そういう中でのライヴなんですよね。俺の中では今年もそういう日だなと思ってます。見てる人はそれぞれの中で楽しんでくれればいいなと思いますね。


Interview&Text : LIMO HATANO



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