|
きょうの社説 2010年8月1日
◎金沢港が重点港湾 「空」以上に「海」の航路が重要
国指定の「重点港湾」に金沢港が選ばれる見通しとなった。同港は今年上半期のコンテ
ナ貨物取扱量が絶好調で、過去最多の1万5473本を数え、年間を通しても過去最多となる可能性が高い。施設整備のさらなるスピードアップが必要な時期だけに、重点港湾の指定はよいタイミングである。「特定重要港湾」の指定を受けている伏木富山港も、金沢港の追い上げに、うかうかとはしてはいられないだろう。中国への航路というと、空路の小松−上海便を連想しがちだが、北陸の経済界にとって 、海路の上海コンテナ便は「空」以上に重要性が高い。金沢港からの主な輸出品目は、織機などの産業機械、建設機械の本体・部品などが多く、中国向けのほか、最近は特にインドや東南アジア向けが急速に伸びている。金沢港がかつて、中西県政の三大失政の一つとやゆされたことを思うと隔世の感がある。 重点港湾の指定は既定路線とはいえ、海上輸送の主要幹線は太平洋側から徐々に日本海 側へ移行してきており、「のびしろ」はまだまだたっぷりあるはずだ。金沢港では、大水深岸壁の整備を前提にコマツが金沢工場を建てた経緯もあり、既に水深12メートルで暫定供用が始まっている。港湾整備をこれからも着実に進め、追い風を生かし切る努力を求めたい。 金沢港の重点港湾指定が内定した一方で、1県1港の方針から、七尾港が指定外となる 見通しなのは残念だ。近くにLPG国家備蓄基地や七尾大田火力発電所を擁する七尾港は公共性が高く、特例扱いでもおかしくない。金沢、七尾両港の選定を求めてきた県は、巻き返しに全力を挙げてほしい。 現在、谷本正憲知事を団長とする県訪中団が上海などを訪問し、金沢港のポートセール スを行っている。上海コンテナ航路は、2006年9月に運航を開始し、現在は週2便態勢となっている。昨年11月からは輸出の所要日数も従来の10日間から3日間へと大幅に短縮した。神戸や大阪、名古屋などの港を使っていた北陸の荷主がより一層、金沢港を利用しやすくなっている。さらなる利便性の向上へ知恵を絞らねばならない。
◎高齢者医療 現行制度の方がましでは
後期高齢者医療制度に代わる新たな医療制度について、厚生労働省の改革会議がまとめ
た中間報告案は、議論が生煮えで新制度の良さがさっぱり見えてこない。現行制度は7月、金沢市で約2千人分の保険料額決定通知書に誤りが見つかるなど多少の混乱は残るものの、既に2年以上が経過し、定着し始めている。わざわざ手間暇かけて新制度に移行する必要があるのか、疑問に思えてくる。衆参ねじれのなかで、野党との協議も必要になることを考えれば、現行制度を手直しする程度にとどめてはどうか。新制度が導入されると、75歳以上の約1400万人のうち、退職者や自営業者ら約1 200万人が国民健康保険(国保)に加入し、残る2割の会社員やその扶養家族らは健康保険組合などの被用者保険に移る。確かに、これなら年齢によって保険証が変わることはないだろうが、年齢区分の解消は単に形だけに過ぎない。 国保では、高齢者の収支は別勘定となり、運営は現行制度と同じく、都道府県単位であ る。税金と現役世代の支援で9割、本人1割の負担割合も現行制度と同じだ。高齢者や現役世代の負担が急に増えることのないよう、公費投入をうたってはいるが、財源については一切触れられていない。 後期高齢者医療制度は導入当時、評判が悪かった。75歳になると、それまで入ってい た保険から抜け、対象者だけの保険に強制加入させられるため、「姥(うば)捨て山」と言われ、「後期」という呼称についても高齢者への配慮がないとたたかれた。当時の自公政権に対し、民主党などの野党が攻撃の材料に使った側面は否めない。 こんな経緯もあって、民主党はマニフェスト(政権公約)に後期高齢者医療制度の廃止 を掲げたが、年齢による区分をなくすためだけに、わざわざ制度を変える必要があるとは思えない。報告案を見る限り、現行制度より優れている点があるとは思えず、無理に移行しても混乱を招くだけではないか。ここはメンツにこだわらず、現行制度を検証・再評価し、問題点を洗い出した方がよい。
|