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きょうのコラム「時鐘」 2010年8月1日
猛暑が続き、ふだん気にとめていなかった小さな木陰もありがたい。鎮守の森を吹き抜ける涼風を、神々しく思うことさえある
8月に入った。旧暦の葉月である。折も折、金沢の市街地で人為的にまかれた除草剤で街路樹が8本も枯れて伐採される記事があった。緑化が叫ばれるこのエコロジー時代に、大切な並木を枯らすとは理解に苦しむ行為である 被害に遭ったのはアメリカフウ(楓)で、昭和40、50年代に植えられたという。金沢市広坂の旧県庁舎横のアメリカフウが有名だ。昭和40年代中ごろに登場して、今やすっかり緑の名所となっている。並木の樹種にもはやり廃(すた)りがある 明治期のアカマツ。大正・昭和前期のプラタナス。戦中・戦後のケヤキ(日本の庭園・進土五十八著)など。1300年前の平城京にも並木があったといい、越中に赴任した大伴家持が、都をしのんで詠んだ歌から、日本最初の街路樹は柳だったと分かるのだそうだ 日本人は古代から森を尊び、樹木を愛し、緑陰を好んできた。先の並木枯死は一地域の話だが、緑化の歴史に逆行する異様な事件として忘れられない。 |