人間は変われる
「この姉と弟ほどまでは重度でないものの、似たような子供は今、施設の中にごっそりいます」
「子どもの虹情報研修センター」の増沢高研修部長（４８）はこう話す。
食べ物をかみ砕く体験がなくサバの煮つけを丸のみする女の子。食事が
ハンバーガーばかりで濃い味つけを好み、調味料をどっさりかける男の子。トイレ以外の場所で平気で排泄し、お尻をふかない子供たち…。
ネグレクトの結果、基本的な生活習慣さえ身についていない子供が目立つという。
増沢さんは「この家庭環境は何？ この成育状況は何？ という子供は少なくない。だが、愛着は親とだけでなく施設の保育士や里親とも結び直せる。人間は変われる。そのことをこの姉と弟は証明している」。
姉は現在、３児の母。弟はサラリーマンで１児の父という。内田さんは２人のことを講義で伝えている。
女子学生は感想をこうつづった。
《異常な環境で育てられたにもかかわらず回復していく様子は見事としか言いようがありません。今、救出後にしっかりと面倒を見てもらえる子はどれほどいるのでしょうか。救出されずに今も虐待されている子、救出されたものの適切な治療を受けられない子のことを考えると胸が痛みます》
産経ニュース 「虐待はどんな傷を残すのか」より。
私は生まれてからいくつかの家に里子に出され、
３歳から６歳まで育てられた家で酷い虐待に遭いました。
その前の里親の家では
まだオムツの取れない私の体は痣だらけだったといいます。
本当の事情はわかりませんが、私が聞いたところによると、
その家は何か事業を営んでいて、そこで働く養父になる父が見かねて
私を養女にしたいと申し出てくれたといいます。
私を里子に引き取ってくれた家には、
私の他に２つ上の男の子が先に養子に来ていましたが、
「お兄ちゃん」は虐待を受けていませんでした。
養父の願い虚しく
私は養父の居ない日中にこの家の養母から酷い折檻を受け続けていたのです。
しかし、私自身はそれが不幸なこととも知らずに、ただ折檻に耐えるほかありませんでした。
抱いてもらうことも優しい言葉をかけてもらうこともなかったと記憶していますが
それを悲しんだり寂しがる感情も知りませんでした。
それは、まだ愛されることを学んでいなかったからでしょう。
ただ養父のいるときは虐待されずに済んでいました。
その養父が突然亡くなったのです。
親戚の家での祝い事のあと、酒に酔い眠り込んだ養父を置いて帰ると言う養母に自分は養父と一緒に残ると言い張ったことを覚えています。
養父の居ないところで折檻されるのが怖かったのです。
養母はみんなの手前、強くも出れなかったのかそのままお兄ちゃんと帰っていきました。
子ども心にホッとした私は養父のそばで眠るその様子を見ていました。
しばらくすると、養父は白目を剥き泡を吹き始めたのです。
何度もしつこく親戚の叔母さんに知らせに行きましたが、なかなか様子を見に来てはくれませんでした。
養父はそのまま突然亡くなりました。
私は悲しいという気持ち以上に
この後自分の身に起きる折檻を考えると恐ろしくて絶望的になりました。
嫌というほど体と心に恐怖を叩き込まれていたのです。
まだ６歳だった私でしたが、養父が居なくなれば殺されると怯えました。
葬儀のときに集まった大人たちが、私のことを、
「こんなに小さいのに、目を真っ赤にして声を出さずに泣いているよ。」
と、口々に話していたのを覚えています。
その晩の食事はカレーうどんでしたが全部食べてもいいと言われました。
不安な心を抱え複雑な気持ちで食べたことを鮮明に覚えています。
この養父の突然の死で、
私を養女にしたい、と申し出てくれたのが、私の最後の父になる人でした。
父は、この養母の姉と内縁関係にあったのです。
「いつもわけもなくぶん殴るような、そんな可愛くない子どもはいらないだろう。」
と、父は何度も申し出てくれたそうです。
なぜ養母はすんなり私を手放さなかったのか未だにわかりませんが、
父の再三の養子縁組の申し出によって、私は虐待の日々から救い出されたのです。
大人に可愛がられることを知らず、
大人の機嫌に敏感で常に顔色を伺い、身の振り方に気を配って育ちました。
６歳までの成育環境で身に付いてしまったものは、今でも私を支配し続けています。
だけど、
それだけじゃない。
人より少し遅れたけど、私は確かに愛された。
そのことが今の私を支えてくれているのだと思います。
私は６歳にして愛されることを知りましたが、
普通は赤ちゃんのときに経験する「後追い」を始め、出かける父を泣いて
どこまでも追いかける様子は近所でも有名だったそうです。
遅くても人生のどこかで誰かに無条件に愛されること。
人としてこの世に生を受けた以上、それが最も必要なことだと思うのです。
与えられた人権はみな同じであるということ。
「どこの国のどんな子どもも
愛されなければいけない平等の命」
だということをもう１度考えたいと思います。
理由があろうが無かろうが、どんな状況でも、心に傷を残す虐待は許されるものではありません。
そして、虐待の早期発見は、地域です。
「おかしい」と感じたときは、兎に角、児童相談所への通報または、地域の民生委員に相談ください。
2010/7/31(土) 午後 0:53 [ nike ]