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性的暴力:被害の空自元女性隊員に退職強要 国に賠償命令

勝訴判決の意義を語る弁護団の佐藤弁護士(右から2人目)ら=札幌市中央区で2010年7月29日、久野華代撮影
勝訴判決の意義を語る弁護団の佐藤弁護士(右から2人目)ら=札幌市中央区で2010年7月29日、久野華代撮影

 同僚の自衛官から性的暴力を受けたうえに退職を強要されたとして、北海道内の航空自衛隊基地に勤務していた元女性隊員(24)が約1100万円の国家賠償を求めた訴訟で札幌地裁は29日、女性側の訴えをほぼ全面的に認め、国に580万円の支払いを命じた。橋詰均裁判長は「上下関係などを利用した性的暴行で、その後も上司らが露骨に退職に追い込もうとした」と、組織的な不法行為を認定した。

 判決によると女性は06年9月、夜勤中に飲酒していた1階級上の男性3曹(35)に内線電話で勤務部屋に呼び出され、胸などを触られたり性的行為を強要されるなどした。その後、女性は上司に訴え出たが、女性自衛官同席でなかったため細かい説明ができず、婦人科受診の申し出も「男性隊員が同行しないと認めない」と言われ、すぐには行けなかった。さらに事件から4カ月後、上司らから「周囲に迷惑をかけた」と退職を強要された。

 判決は3曹の「合意のうえだった」との主張を退け「階級を利用し、周囲から隔絶された部屋で抵抗を抑圧した」と認定。国側が「一貫していない」と指摘した女性の証言については「被害を思い出すことの心理的抵抗は強く、共感して耳を傾けないと事実と異なる説明をすることはある」と信用性を認めた。

 また上司らの事後対応も「原告を厄介者として退職に追い込もうとする露骨な取り扱いだ」と断じ、3曹の暴行による慰謝料を200万円、監督義務を尽くさなかった上司らの処遇による慰謝料を300万円と認定した。【久野華代】

 弁護団の佐藤博文弁護士の話 全面的な勝訴。判決を自衛隊の在り方に生かしてもらわなければいけない。

 航空幕僚監部広報室の話 裁判所の理解が得られなかった。関係機関と調整して適切に対応したい。

毎日新聞 2010年7月29日 19時47分(最終更新 7月30日 1時04分)

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