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家族ら笑顔「良かった」 公共施設再開

(2010年7月28日付)

 口蹄疫の非常事態宣言が全面解除された27日、宮崎市内を中心に図書館や博物館などの公共施設が一斉に再開された。早速、家族連れや子どもたちが訪れ、ようやく戻った日常に笑顔を見せた。宣言解除を「久しぶりの明るいニュース」と受け止める県民がいる一方で、打撃を受けた産業の立て直しに向け「これからが正念場」と再生への決意を新たにする声も聞かれた。

 6月12日以来、約1カ月半ぶりの再開となった同市の県立図書館。午前9時の開館前、入り口では約100人が列をつくった。宮崎市大塚町、無職武田タミ子さん(61)は「本が好きで週2、3回来ていた。閉鎖期間中は借りていた3冊を繰り返し読んでいた。元の生活に戻れて良かった」とうれしそうに話していた。

 口蹄疫が発生した同市跡江では、例年と比べ約1カ月遅れてオープンした児童プールに子どもたちの歓声が響いた。近隣の児童ら45人が水しぶきを上げてはしゃぎ、「さぞ待ち遠しかったのだろう」と監視員の今市哲夫さん(65)。約3カ月ぶりの再開となった高鍋町の県農業科学公園ルピナスパークでは、のんびりと散歩する高齢者や木陰で涼む家族連れの姿が見られた。今後、ブドウ収穫体験など再開PRイベントが開かれるという。

 解除までの約3カ月間、口蹄疫非発生地でも不便な市民生活が強いられた。1歳と3歳の子どもを持つ日南市星倉、主婦工藤美鈴さん(35)は「子どもたちが楽しみにしていた幼稚園の行事が中止され残念だった。(解除は)久しぶりの明るいニュースで晴れ晴れとした気分」と喜ぶ。

 一方、宣言解除をあくまでも一つの区切りととらえるのは川南町平田の園芸農家小高勝寿さん(39)。「解除はされたが、激震地の町民としてこれからも防疫に協力したい。二度と仲間や町が沈む姿は見たくない」ときっぱり。都城市山之口町富吉の園芸、果樹農家紺家紀宏さん(67)も「知り合いの野菜農家も風評被害に悩まされたが、ゼロからやり直す児湯郡の畜産農家は、それ以上に大変だろう。同じ農家として本県の農業を盛り上げるため一緒に頑張りたい」とエールを送る。

 延岡市船倉町2丁目、ホテル経営山田修身さん(56)は「夏本番で旅行シーズンを迎える。減少した観光客をどう取り戻すか、業界にとって正念場」と力を込めた。

【写真】開館と同時に多くの利用者が来館した県立図書館=27日午前9時、宮崎市