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【連載企画】再生めざして―インタビュー(中)

(2010年7月28日付)

■独自防疫体制確立を
JA宮崎中央会会長・羽田 正治氏


 ―多大な被害が出た口蹄疫を教訓に、今後は家畜伝染病へどう対応するべきか。

 羽田 グローバル化が進み、もはや国内だけを見た防疫では駄目だ。農場体験やグリーンツーリズムなどで観光客が農場に入る機会も増え、消毒の徹底が必要。行政にも空港での消毒強化を呼び掛ける。観光客に来てもらうために簡素化されがちだが、有数の畜産県ということを考えなくては。国の基準だけでなく本県特有の防疫マニュアルを作るぐらいであってほしい。

 ―農業、畜産の復興の道筋をどう描く。

 羽田 ウイルスの完全な死滅を待つためにも早急な再開は無理。今度口蹄疫を出したら、農家、行政の畜産経営に対する能力が疑問視され、二度と畜産ができない県になってしまう。3度目をいかにして出さないか。新天地で新しく畜産を始める気持ちで、防除を徹底する覚悟が必要だ。再開は早くても10月ぐらいになる。今後の畜産の最優先事項は衛生管理。約30万頭にも及ぶ犠牲を忘れてはならない。世界のどこにもないような防疫、管理体制をつくることが、新たな宮崎の畜産を構築することになる。

 ―具体的な畜産農家の支援策は。

 羽田 農家の精神的苦痛は続いている。異常な状態で畜産を再開するということで、きめ細やかな対応が必要だ。JAで自己資金や借入金の多少、技術の有無、頭数などに合わせた再興メニューをつくっており、農家に選んでもらいたい。その後も行政と協力してコンサルタント機能を強化した組織を設立し、経営管理を支援したいと考えている。農業には助走期間が最低5年は必要。収入が得られるようになるまで支え続ける必要がある。

 ―新たな畜産・農業モデルの構築を求める声もある。

 羽田 本県の畜産は、極度の密集飼育で口蹄疫に限らず病気がまん延しがち。全体的な農業人口は減らしたくないが、畜産から耕種部門への移行があってもいい。本県は大消費地から離れており、輸送コストがかかる分、より付加価値を高めなければならない。そのための加工場を設立するなどして“6次産業”を確立する施策が必要。そうすれば、今回を機に畜産を辞めた人の雇用先も確保できる。